弱弱しいエイルの姿に、オルデランは相手の気持ちを和らげる言葉を探す。しかし今、適切な言葉が見付からない。大神官として多くの人間に導きの言葉を述べていったが、エイル相手に言葉を述べるのは難しい。
だが、何か言わないといけない。このように、目の前で苦しんでいる人物がいるのだから。
「女神エメリスは、我々を見捨てることはいたしません。そのことは、わかって頂きたいです」
勿論、そのことはわかっている。女神が、現在の状況を許しておくわけがない。女神は平和を愛し、法と審判を司っている。悪と判断した者には、容赦なく裁きを与える。それが、女神エメリスだ。オルデランは口を開き、ゆっくりとしたそのことを口調で語っていく。
それは、やっと見付けた自身の言葉。それに今、エイルが行なうべきことを行なわないといけない。言葉としては簡単に表すことができるが、それは想像以上に難しい。だが、諦めてしまえばクローディアの崩壊に繋がってしまう。シェラ――彼女はクローディアにとって、希望の存在なのだから。
ふと、オルデランはか細い声音を発する。か弱い声音であったが、エイルの瞳には強い光が宿っていた。
「ご迷惑を掛けました」
彼の言葉に対し、オルデランは頭を振る。進むべき道に迷っている人物の背中を押すのは、大神官の役目。それに迷いを持ったまま親衛隊の一員として働いても、足手まといになってしまうことを知っている。
早く一人前の親衛隊となって、頑張って欲しい。それが、オルデランの願い。見方によっては「贔屓(ひいき)」と取れなくもないが、シェラを守護する任務に就く者。早く一人前になって欲しいと願うのは普通だ。
「オルデラン様」
先程とは違い、エイルは真剣な面持ちを浮かべている。突然の変化に目を丸くするオルデランだったが、すぐにいつもの冷静な姿を取り戻し、何か質問があるのかと逆に尋ねていた。
「女神は、シェラ様を認めたのですか?」
それは、前々から疑問に思っていたことだった。クローディアの王座に就く者は直系の男子で、尚且つ女神エメリスが認めた者。しかし、シェラは直系の子供であっても男子ではない。
シェラが、女神に認められたという話も聞かない。エイルはオルデランに、その点を尋ねた。彼の鋭い質問にオルデランは押し黙るが、真実を言わないわけにはいかない。それに隠しておいても、いずれはわかってしまう。また、信頼できる人物であり知っておかないといけないことでもあった。


