アルフレッドの行動が気に入らないので、悪い言葉を発した――というのが本音。それに二人は親衛隊の仲間同士なので、冗談も言い合える仲だ。だからこそ「魔法でぶっ飛ばす」という、危険な発言も可能だった。
しかし、マナは二人の仲を知らない。それに、根が真面目の女の子。エイルの発言を本気で捉えてしまい、顔色が優れない。エイルは彼女の思い込みで片付けたいのだが、簡単に「魔法でぶっ飛ばす」と言った方も悪い。
そもそも魔法の使用方法を間違えると、とんでもないことになってしまう。勿論、その点はメルダースで学び担当の教師からも耳に胼胝ができるほど聞かされていた。
それを忘れ「魔法でぶっ飛ばす」と発言してしまったのも、ラルフ相手に好き勝手に行なっていた影響だろう。不適切な発言をしてしまったことに、マナに詫びそのようなことをしないと約束した。
「その……安心しました」
「いや、僕も悪い。つい……」
「エイル様?」
「何でもない。早く行こう。遅くなってしまったら、兄さんに何を言われるかわからないから」
エイルの言葉にマナは返事を返した後、籠を持ち直そうとするが横からエイルに籠を奪われてしまう。彼の行動に細い声音を発するマナであったが、最初の約束はエイルが籠を持つというもの。そのことを思い出したマナは、囁くような声音で「お願いします」と、返すしかできなかった。
その後、肩を並べて帰って行く二人。最初エイルとアルフレッドのやり取りを見ていた王都の住人達も、今は何事もなかったかのように二人の横を通り過ぎていく。そして、いつもの賑やかさが戻っていた。
◇◆◇◆◇◆
マナと共に無事に屋敷に戻った後、夕食の時間まで余裕があったのでエイルは再び屋敷の外へ出た。そして、彼が向かった場所というのは、クローディアの民が崇めている女神エメリスを祀っている大神殿。
訪れた理由というのは、女神に祈りを捧げる為。また、メルダースを無事に卒業できたという感謝の気持ちを伝える為。そして運命がいい方向に進み、クローディアという国を守って欲しいと願いを伝える為。
エイルは石の床に両膝を付け、沈黙の中で祈りを捧げる。現在、大神殿の中で祈りを捧げているのはエイル一人。普段は多くの人間が出入りしている大神殿だが、今日は珍しくエイル以外誰もいない。ふと、大神殿の中に足音が響き渡る。その音にエイルは立ち上がると、足音が響く方向に身体を向けた。


