「お前……」
「何を怒っている」
「お前が、口説いているからだ」
アルフレッドがマナを口説いている――それを目の前で見ていたエイルは、怒りが沸々と込み上げてきた。彼女の将来を考えている――というのは、建前上の理由。エイルの本音の部分は「アルフレッドに、彼女を取られたくない」という思いが、心の奥底に存在していたから。
だからこそ、イライラが続き彼に八つ当たりをはじめてしまう。しかしその態度が、物事を悪い方向へ進ませてしまう。相手は、その方面には妙に勘がいいアルフレッド。エイルがマナに特別な感情を抱いているということを簡単に見抜き、今度はエイルをからかいはじめた。
「アルフレッド!」
「隠すな」
「隠していない。お前が勝手に、そのように思っているだけだ。で、これ以上口説かれたら困るからマナは帰る」
「やっぱり」
「やっぱりじゃない!」
冷静で真面目な印象が強かったエイルだが、アルフレッド相手に大声を出し動揺を隠し切れないでいる。だが、これ以上マナに自身が動揺している姿を見せるわけにもいかない。エイルは再度屋敷に戻るように言うと、アルフレッドを睨み付け彼だけに聞こえる声音で「いい加減にしろ」と、怒った。
その目は鋭く、全身から殺気を放っている。不穏な空気を感じ取ったアルフレッドは、流石にこれ以上からかうと何をされるかわかったものではないと悟る。内心もう少しからかっていたかったが、我が身の方が大事。それにエイルの怒鳴り声の影響で、多くの人間が此方に視線を向けていた。
アルフレッドも一応羞恥心は持っている。それに彼も複数の視線が気になりだしたのか、エイルの肩を叩き一言「頑張れ」と言い残し、その場から逃げ去った。その瞬間、エイルは溜息を付いていた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫。しかし、アルフレッドの奴……今度会ったら、絶対に魔法の的にしてぶっ飛ばしてやる」
「エ、エイル様……」
エイルの口から「魔法でぶっ飛ばす」という単語が出るということが信じられなかったらしく、マナは本気でアルフレッドを魔法でぶっ飛ばすのか尋ねる。勿論、本気の魔法でぶっ飛ばすわけではない。いくら丈夫に出来ているアルフレッドでも、エイルの本気魔法が直撃すれば消し飛んでしまう。


