「屋敷で働いているメイド」
「本当か?」
「嘘じゃない」
「怪しいな」
その言葉に続きエイルとマナの両方を人差し指で指すと口笛を吹き、一言「似合っている」と、彼等を茶化す。すると恋愛に関して初のマナが、アルフレッドの言葉に頬を赤らめ俯いてしまう。そして、一方エイルは「何を言っているのか」という表情を作り、アルフレッドに詰め寄っていく。
「睨むなって」
「マナが迷惑だよ」
「へえ、マナちゃんか」
メイドの名前が判明した途端、アルフレッドはマナに対して最高の笑顔を作る。しかし筋肉隆々のアルフレッドの笑顔は、不気味の何物でもない。マナは反射的にエイルの後方に隠れると、顔だけを覗かせる。また、彼の笑顔に何か危ないのを感じ取ったのか身体が震えていた。
「苛めるな」
「苛めていない」
マナに恐怖心を抱かれたことにショックを受けたのか、アルフレッドは必死に弁解していくが、彼は全く気付いていない。自分自身が「最高」と証した笑顔が、全ての原因だと――
「マナ、先に戻っていて」
「宜しいのですか?」
「アルフレッドと一緒にいるということは、悪影響しかない。で、これを持っていって。僕はすぐに帰るから」
「はい」
エイルから籠を受け取ると、一言返事を返す。そして優雅な態度でエイルに別れの挨拶を行なうと、マナは真っ直ぐ屋敷がある方向へ走って行ったのだが、途中で何か用事を思い出したのか此方に向かって引き返して来る。
彼女の予想外の行動にエイルは間の抜けた表情で、マナの一連の動作を視線で追う。すると彼女はアルフレッドの前に行くと、軽く頭を垂れていた。
「別に、挨拶はいいのに……」
「で、ですが……」
何とアルフレッドに挨拶する為だけに、マナは態々戻って来たのだ。その生真面目な一面に、エイルは苦笑するしかできない。一方、アルフレッドは違っていた。態々自分の為に戻って来てくれたことに感動したのだろう、何を思ったのかマナをその場で口説きはじめた。


