「お好きな物が宜しいと思います」
「好きな物か……あいつが好きな物って、何だろう。あの体格で、甘い物が好きというのは有り得ないし」
「それでしたら、お酒はどうでしょうか。男の方は、お酒が好きで酒場に行かれると聞きます」
「酒か……」
「駄目でしょうか」
「いや、酒でいいと思う。果実酒というタイプじゃないから、ジャガイモの蒸留酒でいいかな。で、有難う」
「お力になれて、何よりです」
エイルの力になれたということで、マナの表情が徐々に明るくなっていく。メイドの立場上、主人やその家族の手助けするのは当たり前だが、世話係というのが関係しエイルを特別に思ってしまう。その証拠に表情が明るくなる他、嬉しそうに表情を緩めているのだった。
しかし、いつまでも喜んでいる場合ではない。当初の目的は、お菓子を作るのに必要な木の実を拾いにやって来た。それに約束の時間までに帰宅しないと、二人ともイルーズに怒られてしまう。
それに菓子作りには沢山の量を使用するので、今籠に入っている量では全く足りない。その為、集める速度を速めないと約束の時間に間に合わない。森に到着した当初はわいわいと楽しんで木の実を拾っていた二人であったが、今は黙々と拾い続ける。そして数十分後、目標の分を拾い終えた。
「お疲れ」
「有難うございます」
「戻ろうか」
「はい」
「で、籠は僕が持つ」
彼女からの返事を待つ前に、エイルは籠を持ち上げていた。それに対しマナは何か言いたそうであったが、珍しくエイルの行動に従っていた。そして互いに肩を並べる形で歩いていると、ちょうど王都の中心部でエイルの同僚のアルフレッドと偶然にも出会ってしまった。
するとアルフレッドの方もエイルの存在に気付いたらしく、満面の笑みを浮かべつつ片手を上げ軽い口調で挨拶をしてきた。次に彼が興味を示したのは、エイルの隣にいるマナ。エイルが異性と歩いていることに好奇心が擽られたのか、両者がどのような関係か尋ねてくる。


