アルフレッドのお陰で、エイルは無事に母国のクローディア王国に到着することができた。彼は帰宅と同時に真っ先に父親のもとへ赴き、全ての出来事とクリスティの確約を得たことを報告する。

 クリスティの確約が得られたことに、フレイは何処か安堵した様子であった。これに関しては、半分賭けだったという。しかし息子の頑張りで確約を得ることができ、予想以上の努力にフレイは素直に褒め称えた。

 何せ相手は「曲者」の代名詞のような人物で、地上最強の魔女。確約を得られたことは奇跡に等しく、これにより少しでも物事が良い方向に進むとフレイは力強くエイルに言い聞かせる。

 滅多に相手を褒めないフレイが、このように息子を褒め称えた。やっと父親に認められた――と喜ぶが、その考えは甘い。フレイが次に発した言葉は、親衛隊の一員として真面目に働くようにという注意だった。

 長々と続く父親の言葉にエイルの額には嫌な汗が滲み出てくるが、途中で勝手に退出するわけにもいかないので、自分自身に気合を入れ懸命に乗り越えた。そして、話は十五分続く。

「――ということだ」

「はい」

「で、質問は?」

 その言葉に、どのような質問をしていいのか迷う。ふと、アルフレッドの顔を思い出したエイル彼のことを尋ね、どうして態々アルフレッドをエルベ王国まで向かわせたのか尋ねる。

「役に立っただろう?」

「……凄く」

「あの者は、お前を仲がいいと聞いているからな。お前の身に何かあったら、シーナが心配する」

「母さんは、昔から心配性ですから」

「そういうことだ。それにお前を誰かに迎えに行って欲しいと頼んだのは、そのシーナだからな」

「で、アルフレッド?」

「不服か?」

「……いえ」

 今回の件に自身の妻の名前を上げているが、本音ではフレイもエイルを心配していた。その証拠に、彼の表情が優しく緩んでいる。父親の優しさにエイルは軽く頷き返すと、親衛隊の一員として命をかけて女王シェラを護ることを誓う。その為に、学園長のクリスティに確約を得たのだ。