「意外」
多くの知識を有しているとされているエイルが、ラルフの故郷の村の位置を知らない。衝撃的な真実に、ラルフは目を見開く。しかし、いくらメルダースで勉強したとはいえ全てを把握しているわけではない。それに、ブレイダ共和国は遠い国。小さい村まで知っている方が凄い。
「まあ、確かに……」
「で、どういう場所だ?」
「崖っぷちの村」
「はい?」
簡略的な説明に、エイルは反射的に聞き返してしまう。「崖っぷちの村」そのような場所で、どのように生活を送っているというのか。最初はラルフの故郷に興味を抱いていなかったが、好奇心が疼き出す。
「崖っぷちといっても、普通に村があるんだよ。確かに、ちょっと通行が大変だけど。葡萄栽培が盛んで、ワインの名産地だよ。葡萄が潮風でいい感じになって、美味しいワインができるんだ」
「へえ、そうなんだ」
ブレイダ共和国は、ワインの名産地がある。という話を聞いたことがあったが、まさかラルフの故郷がそうであったとは――彼の話を聞いていると、一度行ってもいいと思いはじめる。
だが、今は本音を言わない。彼に「行く」と言ったら、変に馴れ馴れしくくっついてくる可能性が高い。それに国に帰郷後に就く職業も深く関係しており、予定がたてられない状況だ。
「お前の村の状況はわかった」
「じゃあ……」
「だから、気が向いたら」
「向くことを願っているぞ」
「わかったよ。それじゃあ、互いに頑張ろう。あっ! ラルフの場合は、クビを切られないようにしないと」
最後の最後で毒を吐くのを忘れないのが、エイルの特徴。一方このような状況でも毒を吐いてくることに、ラルフは唖然となっていた。更にシクシクと泣き出してしまうが、ラルフも成長している。彼は瞬時に復活を果すと「絶対に出世する」と、大勢に聞こえる大声で宣言した。
メルダースでの学生生活はいい加減であったが、世の中に出て働くようになった時はいい加減でいるわけにはいかない。そのことを理解したのだろう、先程の宣言はそれを表していた。エイルは彼の宣言を聞き苦笑すると、ヒラヒラと手を振りラルフと別れるのだった。


