ロスト・クロニクル~前編~


 頑張れ。

 それが、後輩への応援の言葉。

「さて……と」

 大きく伸びをすると椅子から腰を上げ、寝台に横になった。普段であったら予習復習を行なうのだが、もうそれを行なう必要はない。それに、早い時間にメルダースを出る予定だった。

 エイルは毛布を頭まで被ると、明日に備えて眠ることにした。いい夢を――それを願いながら。


◇◆◇◆◇◆


 そして――

 大量の荷物を持ち、エイルは校門前にいた。それは、エイルだけではない。多くの卒業者が、校門の前に集まっていた。

「じゃあ、元気で」

「皆も」

 それぞれが、別れの言葉を言う。仲には別れが辛いのか、涙ぐむ者もいる。しかし、永遠の別れではない。いつか切っ掛けや運命が交じり合う時があれば、互いに会うことができる。その中で一番目立つ者――それは、ラルフだった。彼は目元に大量の涙を浮かべ、エイルの手を握り締めていた。

「遊びに行っていい?」

「駄目」

「それなら、俺の実家に……」

「気が向いたら」

「おお! 待っているよ」

「でも、場所がわからない」

 彼の言葉に、ラルフは身体を硬直させてしまう。ラルフの故郷のブレイダ共和国という国で、国土はクローディアより広くどの地方の何という名前の村か町で暮らしているのか説がないと、辿り着けない。

 エイルの指摘にラルフは鞄の中からメモ帳とペンを取り出すと、自分が暮らしている場所を走り書きする。慌てて書いたのでメモ帳に書かれた文字は正直汚いが、解読不能という文字ではない。

 彼の故郷は、エイトニル地方に存在するアースロットという名前の村。メルダースの授業で地理を勉強しているのでエイルはエイトニル地方というのは知っていたが、村の名前は知らない。知らないということは、それだけ小さい村なのだろう。すると「知らない」という単語に、ラルフが食い付いた。