ロスト・クロニクル~前編~


 最後の最後まで、本当にラルフは疲れる相手だ。しかし正直意見として、ラルフ相手の学園生活は毎日がスリリングでこれはこれで面白かった。彼の本音に、ラルフは間の抜けた顔を作る。すると相当嬉しかったのか徐々に表情が緩んでいき、両手でエイルの手を握り締めた。

「俺達、親友?」

「友人」

「やっぱり?」

「まあ、悪友に昇進」

 「親友」と呼んでくれなかったことに緩んでいた表情が、瞬時に硬直する。だが「悪友」に昇進したことは嬉しかったのか、卒業後に手紙のやり取りをしたいと頼むが瞬時に断られた。

「出世したら、連絡できないよ」

「お前の出世の話なら、風の噂で知ることができる。お前は変わっているから、北国にも伝わる」

「酷い言い方」

「まあ、裏を返せば大陸全土に名前が知れ渡るくらいに、出生しろと言うことなんだよ。頑張れ」

 エイルの言葉に納得したのか、ラルフは「おお!」と甲高い声を上げ、手を叩く。この瞬間、ラルフに新しい目標が生まれた。ラルフは利き手を天高く突き上げると、エイルが言った「大陸全土に知れ渡る有名人になる」と、宣言する。それに対しエイルは、静かに頷いていた。

「よーし、明るい未来へ向かう為の準備をしないと。明日は、寮を出て行かないといけないし」

「まだやっていないのか?」

「俺は、前日にやる主義」

「間に合えばいいけど……それに今、もう昼だぞ。こんな所で油を売っていて、いいのかな」

 本音としてラルフに早く立ち去って欲しかったエイルは、明日のことを指摘していく。真面目に整理整頓しているエイルが帰宅準備に数時間も掛かったのだから、整理整頓を行なっていないラルフが出発の準備をした場合、果たして何時間掛かるか――下手したら終わらない。

 エイルはラルフの肩を叩くと、急いで準備をした方がいいと促す。クリスティの性格を考えると、帰宅の準備を終えていなくても明日になれば問答無道で寮の部屋から追い出すだろう。つまり、私物が残っていても寮に置いていかないといけない。そしてラルフ以外の卒業者は本能でそのことに気付いているので、昨日までの間に帰宅の準備を終えているのだった。