「で、挨拶だけ?」
「いけない?」
「まあ、いいけど。一般常識を持ち合わせていないと思っていたけど、今回は意外だったよ」
「酷い言い方」
「皆が思っている」
その一言は、ラルフの身体に深く突き刺さった。彼は最後の挨拶にやって来たというのに、この日も毒を吐かれた。しかし毒を受け続けたラルフは耐性が付いているので、復活も早い。ラルフは「ふふふふふ」と不適な笑い声を出すと、ビシっと人差し指をエイルの方に向けた。
「俺は出世する」
「う、うん」
「応援して」
「マルガリータのような怪しい植物を育てないというのなら、応援してもいいけど……付き合い長いし」
友人というより、悪友の関係を築いている二人。なんだかんだで、エイルはラルフが真面目に生きてくれることを願ってしまう。それが現実的に可能なら、世界に平和が訪れるからだ。
「嬉しいな」
「でも、失敗するなよ」
「勿論!」
相当の自信があるのか、ラルフは両手を腰に当て仁王立ち。更に胸を張ると、含み笑いをはじめる。流石に長時間ラルフの笑い声を聞いているのは気分的に悪いので、エイルはペシっとラルフの頭を叩くと笑い声を止めて欲しいと訴える。それだけ、ラルフの笑い声は精神的に悪い。
「楽しかったのに」
「僕は嫌だよ」
「エイルが言うのなら、仕方がない」
「妙に素直だね」
「最後は、いい印象を与えたいから」
「そういう考えは、最初から持って欲しいな。そうすれば、もっといい学園生活を送れたのに」
ラルフの考え方は素晴らしいものだが、先程の怪しい笑い方で完全に印象を悪くしてしまっている。しかし、それを言ったら可哀想なのでエイルはその部分を心に仕舞うことにした。これも、悪友の関係を築いているからこそ生まれるエイルなりの優しさであり、これ以上話を悪化させたくないからだ。


