エイルの言葉にケインは頷き返すと「それもそうだ」と、自分が早まった行動を取ろうとしていたことに気付く。その後互いに並んで歩き、仲間達が集まっている食堂へ向かった。
その夜、エイルは寮の私室の片付けを行なっていた。定期的に掃除をしているので、部屋の中は特に汚いというわけではないが、勉強に使用していた教科書と参考書が山積みしている。これをどのように処分すればいいか――エイルは大量の本を目の前に、腕を組み悩む。
ふと、いい方法を思い付く。これらの参考書を後輩達に、無料であげてしまえばいいのだ。捨ててしまうのは、実に勿体無い。それなら後輩達の役に立てて貰ったほうが、何倍もいい。
後輩達にあげると決めたエイルは、参考書を部屋の隅に置いていく。だが、途中で問題が発生する。後輩達に参考書をあげるということを、どのように伝えればいいのか。生憎、全ての生徒に一気に知らせるという便利な道具は存在しないので、一人一人に声を掛けなければいけない。
だが、正直言ってそれは面倒だ。
なら、どうすればいいか。
「仕方ない、学園長に相談しよう」
この場合、一番いいのはクリスティに相談することだ。それに後輩達に配るとなればそれなりの場所を確保しないといけないので、どちらにせよクリスティに許可を取らないといけない。
そうと決まれば、早く仕分けをしないといけない。エイルは制服の袖を捲り上げると自身に気合を入れ、仕分けしていく。そして参考書の仕分けと片付けが終わったのは、日にちが変わった時だった。
エイルは額に滲む汗を拭うと、長い溜息を付く。現在、鞄に詰められているのは在学中に購入した私服。それに、制服と教科書はメルダースで学んでいた記念という形で持って帰る。
部屋の隅に置かれた参考書に、私物が詰められた鞄。エイルは椅子に腰掛ると、それらをしんみりとした心情の中で眺め、今までの学園生活を思い出していく。いい思い出も悪い思い出も、ごちゃ混ぜだった。特に印象深かったのは、珍獣ラルフとの出会いと魔導研究会。
ふと彼等のことを思い出した瞬間、眉がピクっと動く。これはある意味条件反射で、それだけ彼等の行動に悩まされていた。しかし今は、それらも懐かしく思う。なんだかんだで、彼等相手に魔法をぶっ放すのが面白かったのだ。それができなくなるのは、実に寂しい。


