ロスト・クロニクル~前編~


 そのようなことを考えつつ、再び学園長のもとへ行くエイル。案の定、クリスティは目を丸くした。

「そう、わかったわ」

 クリスティの第一声は、これであった。しかし今回、クリスティは首を縦に振らない。彼女の性格であったらすぐに了承するのだが、卒業式後に待っている入学試験の準備が忙しいというという理由で断る。

 彼女の説明にエイルとケインは互いの顔を見合うと、間延びした声音を出す。確かに、入学試験は忙しい。それに魔導研究会相手に決闘を行なった場合、周囲に甚大な被害が及ぶ。下手すれば、校庭に穴が開く。そのような中で入学試験を行なうとなると、イメージ的に悪い。

「本当は、潰して欲しいのよね」

「学園長もご苦労を……」

「当たり前でしょ」

 彼女の言葉に二人は、魔導研究会が学園の全ての人間に精神的なダメージを与えていることを知る。ふと、ケインがクリスティに質問をする。それは自分達が卒業した後、魔導研究会をどうするか――という内容だった。彼の質問にクリスティは瞬時に口許を緩めると、一言「改善」と、返した。

「そ、そうですか」

「魔法対する研究……という点は、面白いと思うのよ。ただ、やり方が問題なのよね。迷惑を掛けるし」

「なるほど」

「それに総帥と呼ばれている人物が、今回卒業するものね。だから、いい方向へ持っていけるわ」

「た、確かに」

 クリスティの発言に、二人は言葉に出さないが「流石」と、感心する。潰してしまえばそれまでだが、利用できる面を伸ばせば今後学園の為になるという。俗に言う「馬鹿と鋏は使いよう」というやつだ。

 クリスティの言葉に納得したのか、ケインは魔導研究会との決闘を諦めることにする。納得したのだから、話はこれで終わり。ケインはクリスティに頭を垂れると同時に、エイルを置いて先に出て行ってしまう。

 予想外の行動にエイルは間の抜けた声を出すと、慌ててクリスティに頭を垂れるとケインの後を追う。

 駆け足でケインの後に追い付いたエイルは彼の肩を軽く叩くと、自分がいる方向に振り向かせる。そしてクリスティの説明に満足しているケインに、魔導研究会の今後に付いて学園長に全てを任せ、自分達は卒業後に待っている未来を楽しんだ方が何十倍も幸せになれると言う。