「今は、恋愛対象じゃないんだ。未来は、わからないけど……で、この話はいいじゃないか」
必死に言い訳を繰り返すエイルに、ケインは腹を抱えて笑い出す。真面目な印象が強いエイルが動揺している姿は滅多に見ることができないので、それに面白さを見出したケインは、更に言葉を続ける。
だが、相手の反応に途中で可哀想になってくる。今のエイルは顔を真っ赤にし、しどろもどろ状態だった。
「ははははは。悪かったよ。で、呼び止めた理由は卒業の挨拶だ。卒業したら、互いに別々だから」
「そうだね。僕は、ケインに出会えて良かった。何と言うか、いい友人だと思っていたから」
「そう言ってくれると、嬉しいな。俺もエイルに出会えて、良かったよ。楽しい学園生活を送った」
「ラルフとのやり取り?」
「あれは見ていて、楽しかったよ。卒業したらあの光景を見ることができないのは、実に寂しい」
メルダースの風物詩――というより日常の光景の一部と化している、エイルとラルフのやり取り。入学者は当初二人のやり取りに戦き悲鳴を上げるが、徐々に耐性を身に付け最後は指を指して笑い出す。
緊張感が漂う学園生活。彼等のやり取りは一服の清涼剤となっていたのか、エイルがラルフに関節技をかけている時はお祭り騒ぎまで発展する。特に、魔導研究会との決闘が印象深いという。あの出来事はメルダースの歴史の中で、最大級の出来事といっても過言ではない。
「懐かしい名前」
「あの研究会は、どうなったんだ」
「まだ、残っているみたい。総帥はラルフで、あいつも卒業するけど……あのままじゃないか」
「これからの入学者の中にエイルのような人物がいたら、研究会の面子が喧嘩を吹っ掛けるのか」
「それも、可哀想かもしれない。卒業の前に、徹底的に潰しておいた方がいいのかな……と、思う」
「俺も、協力する」
魔導研究会とエイルの決闘を見て、ケインも彼等の存在を鬱陶しいという感情を抱いていた。直接的被害を受けていないが、精神的な被害を受けているという。彼等は攻撃魔法と回復魔法の専攻者に、ターゲットを絞っているのだから。その中で特に、エイルが集中砲火を浴びていた。


