「今、一人か」
「学園長に、呼び出された」
「卒業式の日に、最悪だな」
「悪い話じゃないよ。学園長も、怒っていなかったから。どちらかといえば、機嫌が良かったよ」
「そうか」
卒業式の日にクリスティが機嫌が悪かったら、全生徒が最悪な状況に置かれてしまう。おめでたい日は、安全な一日を送りたいというのが本音。特に今日は、特別な日なのだから。
「時間あるか?」
「平気」
「じゃあ、ちょっといいか」
「勿論。ああ、彼女とは仲良くしているか?」
その言葉に、ケインの身体が過敏に反応する。それから察するところ、どうやら上手くいっているようだ。
エイルを含め友人達が仲を取り持ってくっつけたカップルなので、上手くいっているのは嬉しいことだ。しかしケインから、予想外の反撃を受けてしまう。今度はケインが、エイルの恋愛状況を聞いてきたのだ。
「特定の相手はいないよ」
「嘘だ」
「嘘は言っていないよ」
「異性の友人は?」
「まあ、いるね」
真っ先に思い付いたのは、屋敷で働いているメイドのマナ。だが彼女は恋人という訳ではなく、友人といった方がいい。確かに沢山の働いているメイドの中でマナは特別の存在だが、だからといって恋愛の対象として見ているわけではないが、気になっていないといったら嘘になってしまう。
「異性の友人がいるのなら、恋愛対象に発展するぞ」
「そういうものか?」
「そういうものだ」
「て、そういう話をする為に、呼び止めたんじゃないだろう。で、どういう話をしたいんだ」
彼と長く会話を続けていたら、ケインに「マナ」の名前を言ってしまうのではないかと危惧したエイルは、強制的に話を止めてしまう。しかし恋人に関しての話を振ったのは、エイルの方。それを鋭く指摘されエイルはタジタジになってしまうが、彼が負けを認めることはなかった。


