ロスト・クロニクル~前編~


「今、一人か」

「学園長に、呼び出された」

「卒業式の日に、最悪だな」

「悪い話じゃないよ。学園長も、怒っていなかったから。どちらかといえば、機嫌が良かったよ」

「そうか」

 卒業式の日にクリスティが機嫌が悪かったら、全生徒が最悪な状況に置かれてしまう。おめでたい日は、安全な一日を送りたいというのが本音。特に今日は、特別な日なのだから。

「時間あるか?」

「平気」

「じゃあ、ちょっといいか」

「勿論。ああ、彼女とは仲良くしているか?」

 その言葉に、ケインの身体が過敏に反応する。それから察するところ、どうやら上手くいっているようだ。

 エイルを含め友人達が仲を取り持ってくっつけたカップルなので、上手くいっているのは嬉しいことだ。しかしケインから、予想外の反撃を受けてしまう。今度はケインが、エイルの恋愛状況を聞いてきたのだ。

「特定の相手はいないよ」

「嘘だ」

「嘘は言っていないよ」

「異性の友人は?」

「まあ、いるね」

 真っ先に思い付いたのは、屋敷で働いているメイドのマナ。だが彼女は恋人という訳ではなく、友人といった方がいい。確かに沢山の働いているメイドの中でマナは特別の存在だが、だからといって恋愛の対象として見ているわけではないが、気になっていないといったら嘘になってしまう。

「異性の友人がいるのなら、恋愛対象に発展するぞ」

「そういうものか?」

「そういうものだ」

「て、そういう話をする為に、呼び止めたんじゃないだろう。で、どういう話をしたいんだ」

 彼と長く会話を続けていたら、ケインに「マナ」の名前を言ってしまうのではないかと危惧したエイルは、強制的に話を止めてしまう。しかし恋人に関しての話を振ったのは、エイルの方。それを鋭く指摘されエイルはタジタジになってしまうが、彼が負けを認めることはなかった。