ロスト・クロニクル~前編~


 簡単に本音を見抜かれてしまったことに、エイルは反射的に視線を逸らす。そのわかり易い態度にクリスティは口許を緩めると、気に入っている生徒の故郷を地図から消すことはしないと約束した。

 といって素直に信用できないのがクリスティであり、感情の赴くまま突っ走ってしまう。だが、このように言うのだから信用しないわけにもいかない。それに「信用しない」と言ったら、何をされるかわかったものではない。最悪の場合、殺傷能力を持つ圧力が全身を襲う。

 時間の経過と共に変化していくエイルの顔色に、流石にこれ以上嚇しては可哀想と判断したのか、クリスティは組んでいた脚を組み直すと、これで全ての話が終了したということを伝える。

「宜しくお願いします」

「貴方のお父上に手紙を書いてもいいのだけど、貴方が口頭で伝えておいて。その方が、いいでしょう?」

「はい」

「手紙は、結構厄介なのよね。貴方のお父上――バセラード伯に渡ればいいけど、敵側に……」

「学園長の手紙となったら、大事になってしまいます。学園長の力の強さは、有名ですので」

 彼の説明にクリスティは口許に手を当てると、高笑いをはじめる。相当自分の力に自信があるのか「歯向かってくる者は、いつでも相手にする」と、恐ろしいことを言い出す始末。勿論、誰もクリスティに歯向かおうとはしないが、フレイがクリスティと繋がっているとわかったら――

 その点をクリスティは恐れた。

「という訳だから、宜しく」

「はい」

「ああ、それと……何か問題が発生したら、すぐに連絡しなさい。国が傾いたら、元も子もないでしょう」

「わかりました」

 これにより本当の意味で、クリスティの確約を得た。これで物事がいい方向へ行けばいいが、それは遠い未来の話。全ての話が終了しクリスティの圧力からの解放を喜ぶエイルとは裏腹に、クリスティの表情は冴えない。どうやら現在の状況を交え、クローディアの行く末を考えているようだ。

 それに気付いていないエイルはクリスティに一礼した後、部屋から退出する。そして常識を逸脱した圧力から解放されたことにエイルは溜息を付くと、呻き声を出しつつ伸びをする。そして仲間達が寛いでいると思われる食堂に向かうと、その途中で彼の友人であるケインと出会った。