エイルは何とか圧力に耐えていくが、耐えるのが精一杯なので顔色が悪い。身体が微かに震えているエイルの姿に、クリスティは口許に手を当てクスクスと怪しい笑い方をする。ふと、大事な内容を思い出したのか、急に真剣な表情を浮かべ、同時に彼女の笑いも止まった。
「馬鹿の青二才は、今も彼女を好きなの?」
「……らしいです」
クリスティの質問に焦るエイルだが、何とか言葉を紡ぎ出し応えていく。彼の言葉にクリスティは大袈裟に肩を竦めると、一言「いやらしい」と呟き、腕を組みソファーに腰かけ直した。
「結婚は?」
「周囲が、懸命に阻止しているようです。特に父は、シェラ様の結婚相手に慎重のようで……」
「そうでしょうね。女王とあの馬鹿が結婚してしまったら、とんでもないことになってしまうわ」
馬鹿の青二才ことミシェルは、それを狙っている確立が高い。いや、彼の性格を考えると「結婚」を考えているのは、ミシェルの父親だろう。何せ、馬鹿息子はシェラのぞっこんなのだから。
現在、クローディア王国とエルバード公国どちらが優位といえば、エルバード公国の方だ。周囲が懸命に阻止しても、両国の立場を考えるといつまでも阻止し続けることはできない。
今、シェラの年齢は12歳。年齢的に婚約者がいてもおかしくはなく、彼女も一生独身というわけにもいかない。彼女もいつか夫を向かえ、クローディアの王家の血筋を後世まで残す役割を果さなければいけない。
だからといって、エルバード公国の血を混ぜるわけにはいかない。相手は、クローディアを崩しつつある存在。シェラとミシェルの間に子供が産まれたら、とんでもないことになってしまう。それを危惧しているのが、フレイを含めたシェラの守護している者達。だが、時間は待ってくれない。
「確かに、今はいいわね。女王は、12歳なのだから。でも、成長は止められない。16歳かしら、平均的に」
「だと、思います」
「王家の人間は、特に早いわね」
「これも、血……だそうです」
クリスティが言うように、王家に産まれた女子の結婚年齢は一般的に早い。それを考えると、四年後に馬鹿公子と結婚に至ってしまう。だが、その前に相手側はシェラの戴冠式を考えている。正式に女王の地位に就いた人物とそうでない人物、利点が大きいといえば前者に当たる。


