「怖かった」
ラルフはエイルの横に立つと、素直な感想を漏らす。それに対しエイルは、毒を吐いていた。
そもそも、クリスティに対してあの態度は失礼に値する。彼女が怒るのも当たり前とエイルは小声で指摘していくと、ラルフは的を射た発言に落ち込み先程の元気を無くしてしまう。
一言で、ラルフを撃沈させたエイル。彼は勝ち誇った表情を作るが、瞬時に無表情に戻す。ラルフを撃沈させたと同時にジグレッドが彼の名前を呼び、エイルは反射的に返事を返すとクリスティの前に歩み出た。
「おめでとう」
「有難うございます」
「前に言った、マルガリータ退治のお礼……一緒に手渡すわ。それと、卒業式の後に話があるわ」
エイルだけに聞こえる声音で、クリスティが囁く。その言葉にエイルは驚き目を見開くが、抗っても無駄とわかっているので軽く頷いて返事を返す。それに最後の最後で説教を聞かないといけないと危惧していたが、クリスティの真面目な表情からそれが違うと悟った。
彼女が差し出す卒業証明書を受け取るとエイルは、頭を垂れる。同時に、小声で再度礼を言った。
エイルの言葉に対しての返事というものは、クリスティからはない。だが、彼女は微笑を浮かべているので、エイルは彼女がどのような心情を抱いているか瞬時に判断することができた。
エイルがもとの位置に戻ると同時に、ジグレッドが次の卒業者の名前を読み上げる。後、何人続くのか――そう思うほどの人数が呼ばれ、クリスティの手によって卒業証明書が手渡されていく。
そして――
全ての卒業者に証明書が手渡されたと同時に、卒業式が終了するのだった。次の瞬間、卒業者が歓声に沸いた。
「エイル、祝いだ」
「僕は、無理」
「何で?」
卒業祝いをしたいとエイルを誘うラルフだったが、エイルはクリスティに呼ばれていると断る。刹那、ラルフの表情が一気に歪んでいく。どうやら「呼び出し」という部分で怪しい考えが浮かんだのだろう、ポンっとエイルの肩を叩きニヤニヤと笑い出す。その怪しい笑みにエイルは人差し指でラルフの額をコツコツと突っ突くと、怒りを込めた声音で否定した。


