勿論、相手も期待に背いた時の反応を理解していた。メルダースの名前は強い力を持っている反面、取り扱いの方法を間違えると自身に不幸が舞い込む。下手すると、人生が終了してしまう。エイルの指摘を受けなくともわかっているが、再度指摘を受けると緊張感が湧き出してくる。
「仕事、頑張るよ」
「僕も」
「確か、エイルは……」
「誰かに、聞いたのか?」
「勿論」
「まあ、いいか。変な奴に、知られるわけでもないし。それに、いつかは知られてしまうから」
「かっこいい職業だよな」
「見た目は……ね」
メルダース卒業後、エイルは親衛隊の一員として王家の守護の任に就く。確かに、見た目は華やかでかっこいい。しかしそれは第三者の意見で、実際は厳しい世界と親衛隊の先輩リデルが言っていた。
それを刻々と相手に語ってもいいが、それを言うと自慢話になってしまう。またエイル自身、自慢話を好む方ではない。それを知っているのか、エイルは口許を緩めるだけだった。
「卒業後、時々会いたいな」
「それ、いいね」
「じゃあ、会うか」
「数年に一度?」
「個人的には、一年に一回がいい」
「だって、出身国が別々だし」
「そうだよな」
大半の生徒が卒業後共に学んだ仲間に会いたいと思っているが、卒業後それぞれの道に進む。そして中には自分の故郷に帰り就職する者もいるので「会いたい」と言って、簡単に会えるものでもない。
それに北国のクローディア王国と、南国のブレイダ共和国。北から南へ連絡用の手紙を出しても、届くのに相当の時間が掛かってしまう。また冬のクローディアは雪深く、郵便の配達も危険が付き纏う。
クローティアの厳しい自然環境に、相手は渋い表情を作る。勿論、地理の授業で自分達が暮らしている大陸の自然環境に付いて学んでいるが、その土地で昔から暮らしている者の言葉の方が重く実体験が混じっているので迫力を持つ。流石にエイルの意見を聞くと、最初から日を決めておく方がいいと気付く。


