「どうして、逃げるの?」
「その……今、失礼な発言を……」
「いいのよ。マルガリータが退治されたということで、凄く気分がいいのだから。気にしなくていいわ」
クリスティの言葉に、互いの顔を見合う。すると全身から力が抜けたのか、その場で崩れ落ちていく。
「どうしたの?」
「命の危機が去りまして……」
「大丈夫よ。で、受け取ってくれるわね」
「勿論です!」
「では、卒業式の日に手渡すわ。で、話はこれで終わり。本当に、ご苦労様。あの植物には、困っていたのよ」
滅多に相手を褒めないクリスティが、マルガリータ抹殺を絶賛している。彼等にとってこれほど嬉しいことはなく、最後の最後で素晴らしい物を獲得した。互いに何度も頷き合い大声で礼を言う。そして、同時に「失礼します」という言葉を残し、部屋から飛び出していた。
「やったな、エイル」
「普段ラルフに感謝の言葉を言うのも嫌だけど、今回だけは感謝の言葉を言いたいね。凄く嬉しいよ」
「同感」
厄介物の代名詞となっていた、突然変異の植物マルガリータ。それがこのようなかたちで、役に立った。このことを育て主のラルフが聞いたら、何と言うか。彼の性格を考えると、絶叫は間違いない。
しかしマルガリータの尊い犠牲のお陰で、二人の人生が激変する。感謝しているが、彼等がラルフにそれを言葉として表すことはしない。この点に関しては、プライドが関係していた。
「いい人生が、送れそうだ」
「僕も」
「で、エイルの卒業後は?」
「実家に帰るよ」
「俺は、この国で就職だ。卒業が決まった後、就職先を見付けていて……すぐに、内定を貰った」
その言葉に、エイルは力強く頷き返す。流石、世界最高峰の学園と呼ばれ、最強の魔女が学園長を務めるメルダース。其処を卒業する者となれば、すぐに手に入れたいと思うもの。同時に、使えないとわかった時の落胆は大きい。エイルはチクっと、その部分を指摘する。


