「わ、わかりました」
この場合「何故?」という疑問はないわけではないが、クリスティ相手に不必要な疑問は自身の命を縮めてしまう。エイルは深々と頭を垂れた後クリスティの私室から飛び出ると、先程のクラスメイトを探しに向かった。
彼は、いつまでもマルガリータの墓場の前にはいないだろう。だとすると、生徒達が普段溜まり場として使用している場所――食堂か図書室に絞れる。
彼が最初に訪れたのは、食堂だった。確率的にいえば、此方の方が可能性として高い。そして、エイルの勘が正しいと証明される。食堂に、一緒にマルガリータを葬った人物が休憩していたのだ。
エイルはクラスメイトの側に向かうと、彼に声を掛けた。一方相手は、突然のエイルの登場に目を丸くしている。どうやら、長くクリスティに捕まっていると彼は考えていたらしい。
「早かったな」
「いやー、それが……」
「何だ。その顔は」
「学園長が呼んでいる」
「えっ!?」
エイルの言葉に、相手の時間が完全に止まってしまう。「学園長の呼び出し」が、いい内容のわけがない。彼の後頭部から半分魂が抜け掛かっており、顔から一気に血の気が引いていく。
「い、嫌だ」
「多分、素直に行かないと卒業取り消しになるかもしれない。学園長って、そういう人だから」
「……行く」
流石に「卒業取り消し」の言葉は、強力だった。死に物狂いで勉強し、勝ち取った卒業資格を簡単に手放すわけにはいかない。エイルの言葉に相手はスクっと椅子から腰を上げると、自ら進んで学園長の私室へトボトボと歩いて行く。その足取りは、鉛のように重かった。
「怒っていた?」
「学園長?」
「そう」
「どちらかというと、喜んでいた」
と言われたところで、簡単に信用できるものではない。クリスティの性格はコロコロと変化し、晴天が一変雷雨に変化することも珍しくない。そのことを身を持って知っている生徒達はクリスティの呼び出しに過度に反応し、我が身に降り掛かった不運を呪うしかできない。


