しかし、これだけでは不安が大きい。以前、地中に埋めたマルガリータが見事に復活を果したのだから。それも花弁はどどめ色という奇妙な色に変化し、美しかった山百合は食虫植物に進化してしまう。
あの時は、潰れたまま地中に埋めてしまった。だが、それでもマルガリータは見事に復活した。それを考えると、魔法で燃やしてしまった方が一番安全。そう結論を出したエイルはマルガリータを掘った穴の中に投げ捨てると、小声で呪文を唱え火の属性の魔法を使用する。
手加減無しの本気の魔法。穴の中から立ち上った火柱は、一瞬にしてマルガリータを燃やし炭と化した。
火柱が治まった後、エイルは穴の中の様子を覗き見るとマルガリータが完全に炭になったことを確認する。これで、再び復活を果すことはないだろう。無意識に、エイルの口許が緩んでいた。
「よし!」
マルガリータの最後の状態を確認し終えると、エイルはせっせと穴を塞いでいく。そして最後の仕上げとばかりに、スコップの背でペシペシと地面を叩き、掘った箇所を硬くしていく。ラルフに「優しく」と言われていたが、やはりエイルはマルガリータを優しく埋葬できなかった。
地上最低の植物の処分が終わると、エイルは額に滲む汗を制服の袖口で拭き、一呼吸置いた。
だが、これで全ての仕事が終わったわけではない。メルダースの敷地内にマルガリータを埋めたことを、学園長と教頭に報告しないといけない。何せ、以前の事件があるので油断は禁物だ。
「よお! エイル」
その時、誰かがエイルの名前を呼ぶ。その声にエイルは振り返ると、相手の顔に視線を向ける。彼の名前を呼んだ人物はクラスメイトの男子で、片手には透明な液体が入った瓶を持ちニヤニヤと笑っていた。
「何?」
「いい物を持ってきた」
「いい物?」
「植物の成長を抑制する薬だ」
「いいね」
「だろう」
成長を抑制する薬と聞いた瞬間、エイルの顔が怪しく歪んだ。一方薬を持ってきたクラスメイトは、エイルの側に行くと何処に埋めたのか尋ねる。彼の言葉にエイルは埋めた箇所を指差すとクラスメイトが持ってきた薬がどのような効果を齎すか、胸を踊らせながら熱い視線を送った。


