といって、馴れ馴れしいのは嫌い。だからこそ、手が飛ぶ回数が必然的に増えるのだった。

「それは横に置いといて、ラルフは就職先が決まったのか? 前に話していた、研究所とか……」

「おお! 忘れていた。研究所の就職は、直接売り込みに行こうと思っているんだ。メルダースを卒業したんだぞ」

「確かに、メルダースの名前は凄いからね」

「だから、この名前を使って就職だ」

 ラルフは軽い口調で言っているが、メルダースを卒業した実力を持っているので、案外すんなりと研究所の一員になっている可能性が高い。しかし、その後どのようになるかは不明だ。

 だが、不明の方がエイルとしては有難いので、ラルフが研究所に就職できるように願うのだった。

 ふと、一瞬「手紙を――」と言いそうになるが、言葉を出す前に唇を閉じる。ラルフと文通を行なった場合、何か悪い方向に行きそうな予感がしたのだ。下手したら、卒業後もコバンザメ状態になってしまう。

 それだけは何としてでも避けなければいけないが、一方では「結果を知りたい」という気持ちがないわけでもない。そのジレンマに陥ったエイルは、腕を組みどうすればいいか悩み出す。

 その時、天からいい内容が降って来た。まさに、エイルの故郷が信仰している女神の導きだ。

 天から振って来た内容というのは「就職が決まったら、メルダースに報告する」というものだ。何せメルダースの問題児が就職するのだから、学園長や教頭に報告しないといけない。言葉で「心配」と発しないが、特に教頭のジグレッドはラルフの将来を心配しているらしい。

「本当?」

「本当じゃない」

「嬉しいな」

「心配も、別の心配だと思うよ。お前が、マルガリータを世界中に蔓延らせないかどうかって」

「蔓延らせないよ」

「信用できない」

 今までのぶっ飛んだ研究と実験を考えると、ラルフの言葉は信用できない。何せ、マルガリータの変化を「不可抗力」で、片付けてしまうのだから。これで「信用しろ」と言う方が難しい。それに教頭のジグレッドが心配しているのも、この点が深く関係しているのだった。