「肉体の疲労より、精神面の疲労の方が強いよ。でも、やっと終わったから嬉しい。でも、疲れた」

 全ての卒業試験を終えたエイルは、その場に座り他のクラスメイトの試験を見守る。本当は寝台に横になりたいが、長い年月一緒に勉学に励んできた者達。やはり、最後まで付き合いたい。

 その考えは、一番に試験を受けた者も同じだった。彼はエイルの側に腰掛けると、一緒に最後まで見守るという。

「頑張れ」

「応援している」

 これこそ試験を終えた気楽さというものか、二人は両手を上げ左右に振りこれから試験を受ける者達に暖かい声援を送っていく。そう、全員が試験に合格するようにと願いながら。

 普通の試験であったら馬鹿にした応援の仕方に批判が返ってくるものだが、逆に緊張が解れるということで喜ばれた。その証拠に三番目に試験を受ける生徒が、腹を抱えて笑っている。

「行ってくるよ」

「健闘を祈る」

「了解」

 エイルの言葉に三番目に試験を受ける生徒は、軽い口調で返事を返すと試験を担当する教師のもとへ急ぐ。

 そして、魔法を披露していった。

 合否の判定はわからないが、懸命に魔法を使用している姿を見ると、実技の面は全員合格しそうな雰囲気があった。

 しかし、問題は紙の試験の方だ。

 どちらかといえば、此方の試験の方が難しい。何せ試験の最中、何人もの生徒が口から魂の半分を出しているくらいだから。学問の最高峰と呼ばれている、メルダースで学んだことが集約しているテスト。不合格前提というとんでもないテストなので、それは仕方がない。

 卒業試験の合格ラインは、実技は90点以上。そして、紙のテストは平気が87点以上だ。

 高い点数に設定されている合格ラインだが、それに比例して卒業者の進路を大きく左右する。

 「メルダースを卒業すれば、就職先は思いのまま」と言われているのは、このあたりが深く関係しており、同時に高レベルの知識と技術を会得している証拠にもなる。また、メルダースが一流の人物を排出し続けるのも、このような厳しい条件を設定しているからだった。