苦手としている属性だが、きちんと精神を集中した後に使用したので、問題なく発動した。
校庭中に、風が舞う。その力は見学者や試験を待つ生徒に襲い掛かり、彼等の身体を後方へ押す。
エイルは顔を両手で覆い、強風から目を守る。本当であったら魔力を用いて結界を作り魔法の力を弾くのが一番だが、試験の前に無駄な力を使用したくない。そう思っているのはエイルだけではなく、他の受験者も両手で目を覆う。そして風が止んだ後、一部の生徒が口笛を吹いた。
「上手いね」
「あいつは、頑張っているから」
「頑張っているのなら、文句を言わなければいいのに。あれは、絶対に悪い印象を与えているよ」
「だね」
厳しいメルダースで学問を学んでいるのだから、正しい手順を踏めば普通に魔法を使用できる。しかし彼は、極度の緊張感で一回目は半分失敗した魔法を使用してしまった。だが二回目は成功する。
合否は瞬時に下されるのではないが、これほどの魔法を使用すれば合格は間違いないだろう。エイル達は試験を終えた仲間を温かく出迎えると、口々に「頑張ったな」と言い、拍手を送る。
「緊張したよ」
「卒業試験だからな」
「でも、やったよ」
「偉い偉い」
小さい子供をあやすように、一人の生徒が受験者の頭を撫でる。普段であったら「止めろ」と言うが、最終試験からの開放が心にゆとりを生んだのか、撫でられている者は満面の笑みを浮かべる。
「そうそう、次はエイルか」
「緊張している」
「お前なら、大丈夫だよ」
「気楽に言うね」
「日頃の頑張りを知っているからだよ」
「人一倍、勉強しているからな」
その言葉に、クラスメイト達は一斉に頷く。そして気合を入れる形で彼の背中を叩くと、口々に「頑張れよ」と、声援を送る。刹那、見学者がざわめく。その理由は、彼等の目的はエイルの魔法を見学するということにあったからだ。だからこそ、多くの視線がエイルに集中する。


