しかし長々と教師を待たせると再び何を言われるかわかったものではないので、受験を受ける生徒は懸命に意識を集中させると、自分が得意としている属性以外の魔法の呪文を呟いていく。
そして、魔法を使用した。
彼が不得意としているのは、風の属性。本当は別の属性を使用したかったのだが、混乱している状況で導き出してしまったので、間違って不得意の魔法を使用してしまう。だが苦手としている属性なので、上手くはいかない。
それでも「卒業したい」という思いで魔法を制御したのか、幸い魔法は暴走することはなかった。
「堪えましたね」
「な、何とか」
「そういう部分も、点数が高いわ」
「嬉しいな」
教師の言葉に、受験を受ける生徒は嬉しそうに微笑む。極限状態の緊張感の中での魔法使用だったので、彼自身も確実に失敗すると思っていた。それが上手く暴走せずに堪えることができたので、その場で子供のようにはしゃいでしまう。同時に、見学者の間に失笑が漏れる。
「試験の最中よ」
「す、すみません」
勿論、教師から雷が落ちる。
その言葉に一時的に彼は大人しくなるが、嬉しいものは嬉しい。その証拠に、口許は緩んでいた。しかし、試験中は常に緊張感を持っていないといけないのが、メルダースでの常識。油断していた生徒に教師は、もう一度魔法を使用するように言う。暴走しないで確実に発動を条件に――
「一回じゃないのですか」
「誰も、一回で終わりとは言っていないわ」
「そ、そうでした」
よくよく考えれば、試験中に油断していた方が悪い。試験を受けていた生徒は気合を入れる形で両方の頬を叩くと、文句を言わずに真面目にやらなければいけないと自分自身に言い聞かせる。
「じゃあ、いきます」
「どうぞ」
今度は、詠唱の為にきちんと意識を集中する。魔法使用の上で一番重要なのは精神集中だと、授業で学んでいる。彼は今までメルダースで学んだことを思い出しつつ、魔法の使用までの準備をしていく。そして囁くような声音で呪文を唱え、先程と同じように風の属性魔法を使用した。


