ロスト・クロニクル~前編~


 順番ではエイルが先頭ではないので、クラスメイトと一緒に邪魔にならない場所へ下がる。そして先頭の生徒の眺め、自分の順番が回ってくるのを待つ。勿論、緊張感を抱きながら。

 試験は魔法の実技なので魔法を披露するのだが、これには厳しい制約が存在した。それは、自分が得意としている属性を使用してはいけないという、曲者の学園長が考えた決まりがあった。

 その説明がされた瞬間、受験者と見学者がざわめく。そう、昨年前そのような決まりがなかったのだ。

「……思い付きだ」

「だよね」

 ポツリと、クラスメイトが呟く。それに対してエイルを含め、他の者達も一斉に頷き返す。

 それに続き、受験者の溜息が漏れた。

「でも、愚痴は言えないか」

「卒業したら、苦労するからね」

「じゃあ、我慢か。それに学園長に文句を言っても、返り討ちに遭うのが目に見えているし」

「だね」

「よし、文句言わずに見学だ」

「同感」

 最後の最後で、学園長に喧嘩を売る馬鹿はいない。それに下手に機嫌を損ねると、一生に関わる問題に繋がる。卒業試験と一生の運命。天秤に掛けた場合、一生の運命が重くなる。

 しかし約一名、今回から決まった内容に不満を持つ生徒がいた。その生徒は、試験を先頭に受ける者。彼が得意としているのは「火」属性。彼は自分が得意としている属性を使用しようとしていたが、禁止と言われた瞬間項垂れ、何を血迷ったのか担当の教師に詰め寄る。

 普段の冷静さが存在していたとしたら、絶対にこのようなことは行なわない。だが極度の緊張感が彼の精神状態を狂わせているのか、教師に「どうして」と、連呼する。次の瞬間、詰め寄られていた教師が切れた。

 校庭に響く教師の怒鳴り声に、一瞬にして静寂に包まれた。そして、詰め寄った生徒が謝った。

 一人の生徒の我儘の影響で、試験の開始が遅れてしまった。それを取り戻したいと考えているのか、教師が早口で説明していき、評価を下すので早く魔法を使うように促す。だが、精神面で大きく左右される魔法。「早く使用しなさい」と言われて、すぐに使えるものではない。