ロスト・クロニクル~前編~


 と言って、文句を言っていい問題ではない。集まってくる生徒達は、将来の自分の姿を見据え集まってくるのだから。それにエイルもラルフと一緒に、昨年卒業試験を見学に行っていた。

 それを思うと、目撃されての卒業試験は仕方がない。エイルは自分自身に気合を入れると、実技試験に備える。

 一方ラルフは頭の中に実技試験のことがないのか、貰ってきたバクバクと料理を食していた。美味しい料理を沢山食べることができるのが嬉しいのか、幸せいっぱいの表情を作り咀嚼を繰り返す。

 試験を受ける者達は独特の緊張感で疲弊しているというのに、ラルフだけは違う。エイルは最初「ラルフも普通の人間だ」と思っていたが、やはりラルフは人間常識から逸脱している。

 その証拠に何度も料理をお代わりし、生徒達と料理を作るおばさん達を驚かせるのだった。




 食事と休憩後、エイルとラルフはそれぞれ最後の試験が行なわれる場所へ向かう。エイルは魔法を使用するので、学園の校庭へ。そして、ラルフは実験室へと急ぐ。勿論、見学者も多い。

「人、多くないか」

「……だね」

 エイルが校庭に着くと同時に、一人のクラスメイトから声を掛けられた。見学者が集まってくることは覚悟できていたが、まさかこれほどの人数が集まってくるとは予想できなかった。

 彼等はいい場所を確保したいのか、慌しく動き回っている。中には木に登り、教師に怒られる者もいた。

「皆、将来が心配なんだよ」

「俺も、昨年やっていたな」

「僕も」

「これも、伝統なのかな」

「じゃない」

「ああ、緊張する」

「同じく」

 今まで進級試験を一発で合格してきたエイルであるが、心臓に毛が生えているわけではない。彼は「落ち着け」と自身に言い聞かせ、何度も呼吸を繰り返す。すると、数名のクラスメイトがエイルの姿に気付く。それと同時に、彼のもとに駆け寄り試験への意気込みを尋ねた。