ロスト・クロニクル~前編~


 これから試験を受ける者達に待っているのは、紙で行なうテスト以上に難関の実技試験だ。エイルの場合は、実際に魔法を使用して合否を決める。一方のラルフの場合は、調合と実験だ。

 これで、全ての卒業試験が完了する。

 しかし、これが最大の難関といっていい。何せ今までテストで肉体と精神の両方が、疲弊しているからだ。

 それに対し愚痴を言いたくとも言えない状況に彼等は置かれており、その理由は地獄耳のクリスティが何処で自分達の会話を聞いているからわからないからだ。また、内申点に響く。

 だからラルフ以外の者達は、無理矢理食べ物を胃袋の中に納めていき最大の難関の実技試験に備える。

 エイルが綺麗にスープを飲み終えた頃、ラルフが無事に復活を果した。彼は凝り固まってしまった身体を運動を用いて解していくと、目の前に置かれているスープを啜りはじめる。しかしこれだけでは腹の足しにならないというのか、エイルに別の料理がないのか尋ねる。

「元気になったね」

「休憩したら腹が減った」

「羨ましいよ。元気で」

 流石、人間を超越した人物。少しの休憩で復活を果すとは、野生生物もビックリと回復力である。

「じゃあ、食べ物を貰いに行くといいよ。僕達の為に料理を作ってくれたんだけど、皆疲れて食事どころじゃないんだ。だから、結構余っているみたい。貰いに行けば、喜ぶだろうね」

「そうなんだ。じゃあ……」

 エイルから良いことを聞いたラルフは、いそいそと食べ物を貰いに行く。その姿にエイルは、苦笑いを浮かべてしまう。本当にラルフは面白い生き物で、ある意味見ていて飽きない。

 といって、ラルフを観察している余裕はない。実技試験で、魔法を披露しないといけないのだから。

 昨年の自分達のように、試験会場には後輩が見学に来ているだろう。あの時は将来に備えて――と気楽に構えて見学していたが、いざ自分の身に訪れると恥ずかしいような複雑な心境に駆られる。

 下手すると、親衛隊の入隊試験の方が緊張しなかった。あちらは変に注目を浴びなかったのが幸いしたのだろう、あの場でエイルの立場を知っているのはリデルとシードくらいなのだから。だが、此方の場合は変に注目を浴びてしまう。絶対に、多くの生徒が集まってくる。