ロスト・クロニクル~前編~


 この薬草学の問題は、教科書の知識も勿論、実験の過程と結果も問われる問題も存在した。

 その為、日頃実験を他の生徒達に頼んでいる者は、これらの問題を解くのに苦労する。刹那、一部の生徒の間からか細い悲鳴が上がった。どうやら、例の問題で詰まっているようだ。

 流石、メルダースの卒業試験というべきか。ちょっとやそっと勉強しただけで解ける問題を、教師達は用意していない。それにエイルもその実験の問題で詰まり、回答に困っていた。

 彼は机の上にペンを置くと、何やら両手を動かしていく。目の前に実験道具があると仮定して動かしているのか、何かをかき混ぜる動作や液体を調合する動きを取る。その時、回答が導き出せた。

(ああ、そうか)

 正しい回答がわかった瞬間、エイルはポンっと手を叩く。そして机の上に置いたペンを手に取ると、回答を書いていく。しかし、一問を解くのに相当の体力と時間が奪われてしまった。

 これも、二回目のテストというのが影響しているかもしれないが、此処で気を抜いたら全てが駄目になってしまう。ある意味、精神面の強さも一緒にテストされているようだった。

 卒業後、メルダースの生徒だったということで嫌でも注目を浴びる。同時に、感じるプレッシャーは半端ではない。それを考えると、これくらいでへばっていては将来仕事ができない。

(よし!)

 エイルは自分自身に気合を入れると、ペンを握り直す。そして、前屈みの体勢で黙々と問題を解いていく。

 その後、時間ギリギリまで問題を解く。そして終了と同時に、教師が解答用紙を回収していった。




 連続してテストを受けた影響で、大半の生徒が口から魂が抜けていた。その中の一人がラルフで、彼は食事を目の前にしても手を付けようとはしない。それだけ、疲弊していたのだ。

「大丈夫か?」

 と言っても、ラルフからの返事は返ってこない。しかし、エイルも同じように疲弊している。だからといって、食事をしないわけにもいかない。食べ物を食べないと体力が持たず、後でへばってしまう。エイルの昼食は、胃に優しく消化がいいスープ。それを啜りつつ、午後の予定を確かめる。