ロスト・クロニクル~前編~


 これから先、私語は禁止。

 テストを受ける者達の耳に届くのは、己の心音。

 教師の手によって一枚一枚、テストの用紙が配られていく。そして、卒業試験が開始した。

 エイルはペンを手に取ると、問題用紙に書かれている文章を黙読していく。第一問の問題に関しては問題ない。今まで勉強してきたことを覚えていれば、きちんと回答できる問題だから。

 更に、問題を読み進めていく。

 ふと、周囲の様子が気になりだす。エイルは軽く顔を上げると、視線だけを動かし周囲を観察していく。

 一番に視界に飛び込んできたのは、両手で頭を抱えている生徒。その次に視界に入ったのは、此方も両手で頭を抱え時折掻き毟る生徒。また中には、何度も深い溜息を付き諦めている生徒もいた。

 流石、最大難関と呼ばれている卒業試験。授業中であったら聞こえてくるペンの音が、殆んど聞こえてこない。

(苦しんでいるな)

 と思うが、エイルも余裕はなかった。また、制限時間があるので悠長に構えている余裕はない。

 たとえ正しい解答を導き出すことができなくても、最後の問題まで何かしら回答を書かないといけない。それに白紙で出すほど、勿体無いことはしない。エイルは再びテスト用紙に視線を落とすと、授業で学んだ内容を賢明に思い出していく。ふと、回答が天から降ってきた。

 そして問題文の読み間違えは、致命的になってしまう。それを知っているエイルは丁寧に黙読し、その中から回答を導きペンを動かしていく。問題を読んでは回答を思い出し、次にペンを動かしていく。同じ動作の繰り返しだが精神力と同時に体力も消費しいき、また激しく肩が凝る。

 回答の途中でエイルは、血行改善の形で肩を叩く。しかしそれで凝りが解れたわけではないので、次に肩を上下させ血流を良くする。そして一通りの運動を終えると、テストに集中する。

 全ての問題の回答を書き終えたのは、終了五分前。彼にしてみれば、ギリギリの時間だった。

(これでいいかな)

 だが、テストは最後の最後まで気が抜けない。回答が正しいかどうか、残った時間を使い確認していかないといけない。一応、全部回答を書き確認もしたが、正直自信はない。本音としては最初からやり直したいのだが、いかんせん時間がない。もう、これで提出するしかない。