「あと、汚すな」
「わ、わかったよ。じゃあ!」
これ以上長くエイルの側にいると、更なる言葉攻撃が待っていると長年の経験でわかっているのだろう、借りると同時にラルフは自分の部屋に逃げるように帰って行ってしまう。まさに、一瞬の出来事だった。
しかしエイルの方も彼の行動に慣れているので、フッと溜息を付いた後部屋の扉を閉め、寝台に腰掛ける。
そして、先程の手紙を手に取った。
「返事を書くか」
勉強を再開しようと思ったが、エイルは先に手紙の返事を書く方を選ぶ。腰掛けていた寝台から立ち上がると、次に椅子に腰掛ける。そして机の引き出しから数枚の紙を取り出すと、その上にペンを走らせていく。
入学時から、父親と手紙のやり取りをしていた。そして最近では、アルフレッドとの手紙が増えた。
どちらかといえば、アルフレッドとの手紙のやり取りの方が面白い。その理由は、文面が堅苦しくなく更に敬語を使用しなくていいからだ。どうも父親との手紙の場合、文章が硬くなってしまう。
特に、日頃の成績が落ちていないかどうかという内容が毎回のように書かれている。更に、冗談を言い合えないのが辛い。アルフレッドの手紙ではそれを書くことができ、書いている方も楽しい。だからこそ、エイルはアルフレッドとの手紙のやり取りの方に重点を置いてしまう。
ふと、ペンが止まる。
途中で何を書いていいのか迷ったのか、視線を明後日の方向に向け考え込む。するといい文章が思い付いたのか、再びペンを走らせていく。相当いい文章を思い付いたのか、今度はなかなか止まらない。
最終的に、アルフレッド宛に書いた枚数は八枚。それは父親に送る手紙の倍以上あり、それだけ何かを言い易い相手。また、このように手紙を書いているとストレス発散にもなった。
文字を書いた紙を二つ折りにし、封筒の中に納める。その表側に宛名と裏側に差出人の名前を書くと、封筒の上部にノリをつけ封をする。そしてこれを特定の場所に出せば、アルフレッドのもとに届く。
「さて、終わり」
封筒をテーブルの隅に置くと、ノートと教科書を引き寄せる。現在、彼が勉強しているのは魔法理論。魔法を使用する上で欠かせない基礎中の基礎で、これを疎かにしてしまうと魔法が使用できない。また、卒業試験には実技も含まれているので、魔法理論の復習は大事だ。


