しかし考えれば考えるほど、アルフレッドは付いている。クローディアが平和であったら、彼が親衛隊の一員になることはなかった。彼が一員になった理由は「王家の肉の壁」だからだ。
彼は身長が高く、肉体は硬い筋肉で覆われている。拳は煉瓦を砕き、剣で相手をぶっ飛ばしてしまう。
まさに、歩く人間兵器。
だからこそ、選ばれたのだった。
それにアルフレッドは、剣で身を立てたいという気持ちが強い。といって、王家への忠誠が決して低いわけではない。だからといって、本当に彼が親衛隊の隊員に選ばれて良かったというのか。確かに「肉の壁」という点では正解ではあるが、エイルの心境は複雑だった。
「シッカリやれよー」
封筒に書かれている名前を人差し指で弾くと、ポツリと呟く。なんだかんだでアルフレッドには頑張って欲しく、どちらかというとラルフより応援してしまうのが不思議なところ。
その時、扉が叩く音が響く。このような時間帯に誰が訪ねてきたのだろうと首を傾げるが、誰かは見当が付く。
そして案の定、彼の予想は正しかった。
「何?」
「……機嫌が悪い?」
「そんなことはないよ。ただ、時間が時間だからね。で、こんな時間に一体何のようなのかな」
「参考書を貸して欲しいんだ」
「参考書?」
ラルフの言葉に、エイルは訝しげな表情を作る。現在、エイルやラルフの学年の大半が卒業試験の勉強を行なっている。それを考えると、ラルフがエイルに参考書を借りるのはおかしい。
そもそも、学ぶ分野が違う。だというのにラルフは、両手を差し出し参考書を求めてくる。
「ジャンルは?」
「薬草学」
「僕の方は簡単だぞ」
授業のレベルを考えると、ラルフの方が高度な内容を学んでいる。だというのに、ラルフはエイルに参考書を借りに来た。基礎から勉強し直すという風には考えられなくもないが、相手がラルフなので何だか怪しい。ふと、あることが思い付く。エイルは、眉を顰めるとその疑問を口にした。


