何が何でも、それだけは避けないといけない。だからエイルは、今からトラップを張っていく。
それに気付いていないラルフはエイルの優しさに感動し、相当嬉しかったのか瞳が輝いていた。
「優しい」
「誰が?」
「エイルが。前と違う」
「そうでもないよ。一応、心配しただけ。だから、勉強は頑張ってやるといいよ。ああ、無理は駄目だね」
最初の方は心配している素振りを出すが、後半部分で黒エイルの一面を出す。しかし観察力が低いラルフが、彼の計画していることに気付くわけがない。それどころか、更に喜ぶ。
それと同時に、彼は両腕を天高く突き上げた。ラルフにとって、友人と呼べる人物はエイルだけであり、そのエイルが自分を心配してくれている。普段、苛められたり貶されたり、時には手刀が飛んでくるが本心では違う。そう確信したのか、突き上げた腕を左右に振る。
「何をやっている」
「喜びを表している」
「お前って、本当にたまに理解できないことをやるよな。まあ、それがラルフらしいんだけど」
ラルフが真面目になったら、それはそれで恐ろしい。これが彼の特徴なので一度は突っ込みを入れるが、それ以上は軽く横に流す。これは一種の条件反射というべきものか、ついつい突っ込んでしまう。
これも長い付き合いの影響からくるもので、それをわかっているのでエイルは自身の行動を苦笑してしまう。
「さて、勉強」
「頑張るぞ」
「時間、殆んどないからね」
「……言わないで」
ラルフもそのことを自覚しているのだろう、顔色が頗る悪い。しかしへこんでいる時間も勿体無いので、彼は瞬時に復活を果すとテーブルの上に置かれている参考書を手に取り勉強を開始する。
その時、見慣れた顔触れが図書室に入って来る。その者達はエイルとラルフと同学年で、どうやら卒業試験の勉強をしに来たのだろう、彼等も本棚に納められている本を次々と手に取るとそれらをテーブルの上に置き、黙々と勉強を行い頭の中に知識を溜め込んでいった。


