「そうそう。テスト免除と言ったけども、毎日の勉強は怠らないように。これは、忘れないでね」
『はい』
「今日は、本当にご苦労様。今回の素晴らしい演劇を見ると、またやってほしいと思ってしまうわ」
何気ないクリスティの言葉に、全員が一斉に反応を示す。彼等は「テスト免除」を目標とし頑張ったのだが、流石に二回も演劇を行うとなると考えてしまう。それだけ緊張し、生きた心地がしなかった。
生徒達は互いの顔を見合い「どうすればいいのか」という、不安たっぷりの表情を浮かべている。彼等の正直な反応にクリスティは口許を緩めると、当分このようなことを頼まないと返す。
しかしクリスティの言い方は、何か引っ掛かる。「当分」ということは、いつかまた気紛れで生徒達に演劇を行って欲しいと頼むという言い方になる。だがクリスティに反論する生徒は誰一人として存在せず、全員が無言で彼女の発言を聞き暫く先であることを願ってしまう。
「さて、裏方の様子も見に行かないと」
そう言い残すと、クリスティは足音を残し彼等の前から立ち去っていく。そして彼女の姿が消えた途端、盛大な溜息がつかれた。
やはり、クリスティの迫力は半端ではない。演劇で疲れた身体を透明な物体が激突してくる――そんな感覚に陥る。それが影響してか、役を演じていた者達は次々と床に座り込み身体を癒す。
「打ち上げは?」
「俺は、パス」
「私も、無理」
「同感」
演劇で体力を消費し、更にクリスティの影響で精神面も消費した。そのダブルの疲労が災いし、誰もが打ち上げを行なうだけの気力が残されていなかった。誰もが早く、寝台に横たわり眠りたいと思っている。中には何度も欠伸を繰り返し、半分眠っている生徒もいた。
このままでは寮に戻ることができない。彼等は残った体力を振り絞り舞台衣装から制服に着替えると、重い身体を引き摺り寮へ戻ると寝台に倒れ込む。そして深い眠りに付き、多くの生徒が朝まで起きなかった。
今回の件で、クリスティの機嫌が頗るいい。そのことに生徒達は勿論、教師達も喜んだ。いや、彼等だけではない。彼女の力を恐れている人物も、訪れた短い平和な時間を謳歌する。だが、それは一瞬の出来事。一週間後にいつもの性格に戻り、多くの者に恐怖を与えた。


