ロスト・クロニクル~前編~


「変な言い方ね」

「そうでしょうか」

「まあ、いいわ。今回の演劇のことを褒めに来たの。素晴らしかったわ。約束通りに、テスト免除よ」

 それを聞いた全員は、一斉に喜ぶ。

 「テスト免除」を糧に、彼等は頑張ってきた。それが現実となった今、全身で気持ちを表す。
 しかし次にクリスティが言った言葉で、別の方向で賑やかになっていく。それは、貴族の服を着るラルフに「可愛い」と、発したのだ。これほど破壊力がある言葉は存在せず、お陰で爆笑の渦に飲み込まれた。

「笑うな!」

「別に、悪い意味で言ったんじゃないからいいじゃないか。それに、学園長の評価が上がったんだよ」

「そうなの?」

「当たり前じゃないか」

 普段の学園長の性格を考えると、ラルフに「可愛い」と言うことは、まず有り得ない。しかしクリスティの口から「可愛い」と、言った。それだけで、評価が上がったといって過言ではない。

 エイルはわかるように説明していくが、ラルフは意味がわからなかったらしくキョトンっとしていた。だが、頭の中で整理ができるとハッキリとわかってきたのか、ポンっと手を叩く。

 これも、褒めなれていないのが影響だろう。しかし相手が相手なので、素直に喜べないのが現状だった。

「そ、そうだけど……」

「そういうところが、可愛いのよね。貴方のそういう姿って、見たことがないから。本当に、可愛い」

「だって、ラルフ」

「何回も言わないで。恥ずかしい」

 彼も羞恥心を持っているのか、その場で蹲り顔を真っ赤に染めていた。そんな彼の肩をエイルは何度も軽く叩き、そんなに恥ずかしがらなくてもいいと言う。彼の言葉を聞いたラルフはゆっくりと立ち上がるが、相当恥ずかしかったのか顔全体が真っ赤に紅潮していた。

 クリスティはラルフをからかい楽しんでいるが、褒める点は素直に褒めていた。今回のラルフは懸命に役を演じ、彼が努力をしてくれたことで舞台は失敗することなく済んだ。それを認めているからこそ、クリスティはラルフを中心に褒め「可愛い」と、評価したのだ。