自身の力量がわかっていないのか、ウィルソンはレナードに決闘を挑んできた。無謀といえば、無謀そのもの。レナードはウィルソンと違い日々武芸を磨いているので、勝負の結末は誰もが予想できた。
今回の勝負は、完全にウィルソンが不利。
彼の御付が駆け寄り止めに入るが、聞く耳を持つことはなかった。どうやら完全に、頭に血が上っていたようだ。
そして興奮がピークに達しているのか、彼の顔は真っ赤に染まり御付の者達に八つ当たりをはじめてしまう。こうなってしまうと、誰も止めることができない。ただ、彼が落ち着くのを待つしかない。
レナードもナタリーの件がなければ、彼など相手にしなかった。しかし、今回は違う。レナードは不適な笑み浮かべると、ウィルソンに決闘を受けると言う。そう、徹底的に痛め付けるつもりだ。
決闘を受けてくれたことに、ウィルソンは満面の笑みを作る。どうやら此方も勝つ気なのだろう、自信たっぷりの発言を繰り返す。その発言に、御付は頭痛を覚えたのか顔を歪めていた。
見兼ねたレイファスが御付の肩を慰めるように叩き、ウィルソンの御付であることを同情する。
レイファスの言葉が嬉しかったのか、御付の者達は微かに目元に涙を浮かべていた。毎日相当苦労しているのか、レイファス以外の者達も同情を誘う。そして、此方も別の意味で盛り上がった。
だが、唯一盛り上がれない人物がいた。
その人物は、ナタリー。
現在の状況を生み出したのは、侍女のナタリー。それを痛感しているので、周囲に気付かれないように会場の隅へ逃げるように立ち去ってしまう。だが、レナードだけは気付いた。
レナードはレイファスにナタリーの後を追うと耳打ちすると、急いで彼女の後を追う。そして彼女の腕を掴むと、彼女を賭けて決闘を行うことを詫びる。レナードにしてみれば、愛する人を守りたいという気持ちで受けただけで、決して悪い意味で決闘を行なうのではないと説明する。
彼から説明を受けても、簡単に受け入れられる内容ではない。争いが苦手なナタリーにとっては、できるものなら争いは避けて欲しかった。といって、あのウィルソンが素直に従うわけがない。
彼女の優しく純粋な気持ちを知ったレナードは、複雑な心境を抱く。それでも一度受けてしまった決闘を取り止めることはできず、もし取り止めた場合ウィルソンが増長してしまうので、今回は我慢して欲しいと頼む。彼の頼みにナタリーは仕方なく頷くが、表情は硬かった。


