ロスト・クロニクル~前編~


 同時に、危険も付き纏う。

 案の定、事件が発生した。

 何と、ウィルソンが気に入った女性に声を掛けていったのだ。だが相手は一国の王子なので彼の行動を止められる者は殆んどおらず、ウィルソンは本能のままに動く。お陰で、いい迷惑であった。

 何とかしないといけない。

 レイファスはレナードに、ウィルソンを止めるように言う。王子相手に何かを言えるのは、王子しかいない。レイファスの言葉にレナードは一瞬渋ってしまうが、この状況を見過ごすわけにもいかない。

 それに、このような人物をそのままにしておくと、夜会の主催者――この国の王の品格に関わってくる。レナードは気分が重いのか、長い溜息を付く。そして、ナンパを続けるウィルソンに言葉を掛けた。

 勿論、相手はいい反応はない。折角楽しんでいるところを邪魔され、表情は不機嫌そのもの。自分に声を掛けてきたのがレナードとわかった瞬間、口許を緩め何がおかしいのか笑い出す。

 彼にしてみれば、自分より地位が低い人物が文句を言ってきたのだと勘違いしていたのか、今度はレナードのバシバシと肩を叩き出す。その鬱陶しい行動の数々に、レナードの顔が歪む。

 ここで怒りを露にすれば品性に関わってくるので、レナードはグッと感情を抑え付け懸命に耐えた。それを知ってか知らずか、ウィルソンの行動はますます増徴していくのだった。

 その時、事件が発生する。

 何と、ウィルソンがナタリーに目を付けたのだ。彼女の見た目は貴族の令嬢そのものなので、ウィルソンが勘違いし声を掛けたのだった。勿論、口調はナンパそのものなので、レナードの顔が歪む。

 彼は口を開き、ウィルソンを怒鳴りつけようとしたが、寸前でレイファスに止められてしまう。此処で怒鳴ってしまったら、王子の威厳と立場が明後日の方向にぶっ飛んでしまうからだ。

 しかしナタリーが目の前でナンパされていて、黙っていられるほどレナードは聖人ではない。だが、心の中で「我慢と」言い聞かせ、現在の状況を乗り切ろうとするが、更に事件が発生する。相当ナタリーのことを気に入ったのか、彼は彼女と結婚したいと言い出した。

 その瞬間、レナードは絶句してしまう。勿論、ナタリーの方も言葉を失う。またレイファスも、ウィルソンの予想外の言葉に唖然としていた。それに周囲で聞いていた者達も驚き、側にいた者達とコソコソと噂話をしていき、同時にウィルソンに捕まったことを同情する。