二人は、時間を見付けては一緒にいる。それに対して、周囲は特に文句を言うことはしない。特に侍女仲間はナタリーの恋を応援しているのか、影からこっそりと手を貸している。
現在の身分では決して叶えることのできない夢をナタリーという役に重ね合わせているのか、侍女達のわいわいとした声音が会場に響く。しかし二人は彼女達の声が全くに耳に届かないのか、仲良く会話を続け完全に二人だけの世界に入っている。また、時折クスクスと笑い合う。
仕事は、大変じゃないか。
レナードは、ナタリーの身体を心配する。彼女は毎日行なっている仕事でへばることはないが、彼女のことを考えるとついつい大丈夫か気になってしまうという。これも彼の優しさだった。
彼女は特別。
そう言いたいのか、彼の言葉は続く。
その時、レナードから夜会に参加しないか誘われる。突然のことに、ナタリーは即答を避けるが一緒に行きたいというのが本心であったので、身分違いで尚且つ自分が場違いとわかっているがレナードの誘いを受けた。
彼女が一緒に言ってくれることに、レナードは満面の笑みを浮かべ彼女の手を握る。勿論、これは作り笑い。しかし完全に役になりきっているからか、エイルは素敵な笑顔を作った。
主人公とヒロインのシーンが終了すると、次に舞台が変わる。今度の物語の主役は、ラルフが演じる貴族様だった。
本来の彼は「不真面目」と「不思議生物」の言葉が似合うが、物語の中では正反対の人物を演じる。それに貴族様は未知の分野だが、ラルフはやる時はやる。何と、一字一句間違えることなく台詞を言っていた。
名前は、レイファス。
彼も、夜会に出る一人だった。
そしてエイルが演じるレナードの古くからの友人で、何でも話すことができる無二の親友という、現実世界のエイルとラルフの関係を見ているような間柄だった。また、レナードとナタリーの関係を知っており、どのようにしてくっつけるべきかどうか、悩んでもいた。
だが、彼は別の意味で悩んでいた。それは、彼が出る夜会の参加者の一人に問題があったからだ。何でも手癖の悪い隣国の王子が、参加するのだ。性格は、褒められたものではない。必ずといっていいほどトラブルを招き入れ、夜会に参加している全員を困らせている。


