自分が貴族の息子と話した今ラルフに隠し事は必要ないので、貴族の悪い面を愚痴として話していく。その理想と現実のギャップの差にラルフは唖然となってしまい、彼は崩れ落ちた。
「どうした?」
「俺、貴族に憧れていた」
「えっ! 意外」
「庶民は、憧れているよ。金に不自由しないし、美味しい食べ物も食べられる。そして、結婚……」
「結婚?」
「何でもない」
「結婚」という部分は触れてほしくないのか、誤魔化すようにヒラヒラと手を振る。ラルフの変わった態度にエイルは本能的に「危険」悟ると、それ以上何も聞かないことにした。それに彼も、ラルフに言えない物を持っていた。
エイルは何か裏が隠されているかのような笑い方をすると、ラルフに立ち上がるように言う。今日の剣の練習は、これで終わり。本来の予定であったらもう少し長く練習を続けていたのだが、先程の怪我の件が引き摺っているので、ラルフに違う練習を行いたいと提案する。
「いいの?」
「まあね。運動していないから、振るのが大変だから。明日から、筋肉を鍛えないといけない」
言葉で「運動していない」と言っているが、半分本音で半分言い訳だった。しかしエイルは話術に長けているのでラルフは気付いていなかったが、その代わりに冗談を言ってくる。
「筋肉ムキムキ」
「そこまでならないよ」
「似合わないから?」
「というか、嫌だよ」
「俺も嫌だ」
「なら、言うなよ」
冗談とわかっているが、ついついムキになってしまう。こうなると、完全にラルフのペースだ。
今の状況では、ラルフに敗北してしまう。それを知ったエイルは人差し指で頬を掻くと「行く」と短い言葉を残し、建物の中へ逃げるように駆けて行った。その慌てっぷりにラルフは口許を緩めると、ガッツポーズを作る。普段エイルにやられまくっているが、今日は勝つことができた。それが嬉しいのか小躍りをしつつ建物の中へ向かうが、災いは突如降り注いだ。


