また、地上最低の植物「マルガリータ」の存在は、実に大きい。最近、喧嘩では勝てないと学習したのか、間接的な攻撃を仕掛けてくる。そのひとつが、マルガリータの種を配る行為。
勿論、そのような危険な種を欲しいという者はいない。しかし何を思ったのか、それを手渡す。
その行動が、ラルフなりの反撃方法と知ったのはつい最近。以前、マルガリータの種を手渡すで、エイルは拒絶反応を示した。そのことを覚えていたのか、ラルフはとんでもない反撃を生み出した。
ラルフの額から滲み出る血を見た瞬間、それらの出来事が一瞬にして脳裏に過ぎる。同時に、溜息をついた。
「何?」
「……何でもない」
「殺さないでね」
「大丈夫だ」
同様が隠せない今、エイルは声を荒げてしまう。いつもと違うエイルの姿にラルフは疑問を抱くも、この状況でそれを言うことはできない。現在、目の前に切っ先があるので、再び沈黙してしまう。
しかし、ラルフは気付いていない。エイルは、ラルフからの反撃攻撃を恐れていることを――
エイルは、二度目の溜息をつく。
どうやらマルガリータを思い出した影響で、やる気がなくなってしまったようだ。エイルは剣を下ろすと、鞘に納める。突然のことにラルフは左右に視線を走らせると、トラブルが発生したのか尋ねた。
「いや、違う」
「そうかなー、エイルらしくない」
「別に、普通だよ」
「なら、安心だ」
「何だ、その言い方」
「後で、何かされそうだから」
「それなら、今やっていい? 瞼を閉じる。殴ったり蹴ったり、剣で斬ったりはしないから」
「わ、わかった」
不安の方が大きかったが、エイルの言葉に従い瞼を閉じる。完全に瞼が閉じられたことを確認すると、エイルはポケットからハンカチを取り出すと、血が滲み出ているラルフの額を素早い動きで拭く。そして取り出す時と同じ速度で、ハンカチをポケットの中に仕舞った。


