鞘を地面に落とすと、両手で柄を握り締める。そして流れるように剣を振り、緩やかに舞う。
エイルの動きは「剣舞」の言葉が似合い、ラルフは何度も「ほへー」と言い、関心していた。
鉄色の剣に、月光が反射する。その瞬間、剣の表面に光が滑るように流れ、一瞬切っ先が輝く。
本来、一対一で対決を行い練習するのが一番だが、剣を持った経験がないラルフにそれを求めるのは濃く過ぎる。それに最低限の剣術を学んでいない者が剣を振った場合、自分で自分を傷付けてしまう。
普段、ラルフ相手に好き勝手に行なっているエイルだが、やっていいこととやってはいけないことは理解している。また経験がない者を相手にしては、いい意味での練習にならない。
「いいというまで、動くな」
「何で」
「怪我したくないだろう」
「お、おう」
先程の出来事もあり、瞬時にエイルが言いたいことを察する。ラルフは両手を太股の横に付け、直立不動だった。
ラルフが動かないことを確認すると、エイルは柄を握り直す。間違って手から抜けてしまったら、下手すれば相手を殺してしまうからだ。エイルは大きく深呼吸を繰り返すと、危険な練習を開始した。
剣が振られると同時に、一陣の風が舞う。それはラルフの前髪を揺らし、背筋を凍らせる。
エイルが行なった行為――それは先程と同じで、ラルフの目の前で剣を振ったのだった。今回は事前に身の構えができていたが、目の前で剣を振られ普通にしていられる方がおかしい。
ラルフは半分口から魂が抜けてしまっていたが、何とか耐え忍ぶ。これも、熱い友情の為と思い。
次にエイルは剣を水平に構え、ラルフの額ギリギリに切っ先を当てる。しかし手元が狂ったのか、額にちょっぴり血が滲む。それを見たエイルの眉が、ピクっと動く。だが、恐怖に戦くラルフは気付いていない。
(す、すまない)
エイルは、心の中でラルフに詫びる。同時に、練習が終わるまでに血が止まってくれることを願う。これを見た場合、ラルフは絶対に食って掛かってくるだろう。普段、のほほんっとしていて「マルガリータ」と叫ぶラルフだが、本気で怒ると想像以上に怖いことを知っている。


