しかし、エイルが向かうのは専用の教室ではない。何を思ったのか、学園と寮の外――校庭へ向かっていた。
考えていた場所とは違う場所に連れて行かれることにラルフはオドオドしてしまうが、相手が相手なので何も言うことはできなかった。文句を言ったら、手が飛んでくる可能性が高い。
「暫く待つ」
「エイルは?」
「忘れ物」
「寂しい」
「何が寂しいんだよ。お化けは出ないから、大丈夫だよ。それに、出たら出たで悲鳴を上げればいい」
「上げたら、助けてくれる」
「うーん、多分」
曖昧な言い方に、ラルフは反射的に突っ込んでいた。だが、エイルは助けないと言ったわけではない。彼は日頃ラルフ相手に遊び、言葉では「親友」を否定しているが、根っから嫌っているわけではない。
その証拠に練習に付き合い、文句を言う。本当に嫌っているのなら、相手もしないだろう。
エイルは恐怖で戦くラルフを宥めると、一人残し忘れ物を取りに行く。勿論、ラルフが心配なので時間は掛けない。
数分後、エイルがきちんと戻って来る。彼が言っていた忘れ物というのは、練習用の剣。そう、彼は剣の練習を行なおうとしていたのだ。それを見た瞬間、ラルフは約束を思い出したのかか細い悲鳴を上げた。
「何?」
「忘れ物って、それ?」
「そうだけど」
「俺、練習台?」
「勿論、やってほしいね。でも、今はいいよ。剣を振るから、お前なりの感想を聞かせてほしい」
「お、おう」
「助かるよ。で、離れる。これは練習用の剣だけど、当たったら怪我するかもしれないから」
それを聞いたラルフは、脊髄反射に近い動きでエイルから離れる。その人間離れした動きは、流石ラルフというべきか。エイルは苦笑しつつ、練習用に持って来た剣を鞘から抜く。これは普通の剣とは違い切れ味を落ちるが、重さは本来の剣と同じで重量感が感じられた。


