「お疲れ」
「お、終わった」
休憩を入れずに、ラルフは台詞の練習を続けていた。これも、エイルのスパルタ教育の影響か、疲労感は半端ではない。終了と同時に寝台に倒れ込むと、肩で何度も呼吸を繰り返していた。
「演劇って、大変だ」
「体力勝負だね」
「裏方が良かった」
「何を今更」
いくら我儘を言っても、残念ながら役の交代はできない。それに「辞める」と言った瞬間、周囲から何を言われるか。特に学園長が、文句を言うに違いない。同時に、魔法も飛ぶ。
それをエイルから何度も説明を受けているので、多少我儘を言うが駄々を捏ねることはしない。学習能力が乏しいことで有名なラルフであるが、身の危険に関しては高い学習能力を発揮する。
その特殊能力が、ラルフの身を守っているのだろう。寝台の上でゴロゴロと回転していた友人の姿に、エイルは苦笑してしまう。ふと、回転していたラルフの動きが止まった。そして、疑問を抱いていたこと――エイルが演じる役について、あれやこれやと質問してきた。
「何?」
「エイルの役って、王子様だよね」
「そうだよ」
「似合うね」
「どうも」
「ねえ。まさか、本当の王子様じゃないよね。エイルって、凄く王子様役が似合っているから」
「違う」
「えー、嘘だ」
確かに実家は金持ちだが、王家の人間ではない。父親が伯爵の地位を持つ所謂貴族様であり、其処の次男坊で王家との繋がりは親衛隊の一員というところくらい。それを丁寧にラルフに説明していいが、エイルの父親が貴族と知ったらどのような反応を取るかは、火を見るより明らか。
しかしラルフはおかしな部分で勘がいいので、嘘を付いたところで簡単に見抜いてしまう可能性が高い。それに実家のことで友人達に口止めしているが、そろそろ限界が近い。エイルは髪の毛を弄くりつつ、自分の実家に付いて話していく。勿論、ラルフは瞬時に食い付いてきた。


