ラルフの素直な反応にエイルは「偉い」と言い、彼の肩を叩く。相手は人間を超越した肉体の持ち主なので、簡単に壊れない。それに本気を出して練習しても大丈夫と判断したので、相手役に選んだ。
勿論、全部ラルフに貧乏籤を引かせるわけではなく、珍しく台詞練習に付き合おうと思った。それは、剣の練習の見返り。それを聞いたラルフはエイルの両手を掴むと、キラキラと瞳を輝かした。
「いいのか?」
「僕も練習になるし」
「でも、嬉しいよ」
「いつまでも、握っているな。気持ち悪い。ほら、全体練習をしよう。演劇の他に、勉強しないといけないし」
「勉強するの?」
「当たり前だよ。メルダースを馬鹿にしちゃ駄目だ。此処は、最高峰と呼ばれている学び舎だよ」
エイルの正論に、ラルフは言葉を失う。あの曲者の学園長が、勉学を疎かにするわけがない。今、演劇の為に一時期授業が止まっているが、後でみっちりと復習という名前の授業が行なわれるに違いない。
勘のいい一部の生徒は、毎日寝る前に真面目に勉強を行なっている。そしてラルフを含めた勘の悪い生徒は、演劇の方に集中してしまい勉学を疎かにしていた。エイルの指摘がなければ、ラルフは後々相当苦しんでいただろう。それだけ、メルダースを甘く見てはいけない。
「間に合う?」
「毎日、真面目に勉強すれば」
「よ、よし。頑張るよ」
「それと、練習も」
「お、おう!」
真面目に取り組むラルフの姿に、エイルは心の中で「明日、天気が悪い」と、思うがやる気が無いよりあった方が何倍もいい。エイルはクスっと怪しく笑うと、仲間達に通して練習しようと提案していた。
◇◆◇◆◇◆
その夜、約束通りエイルはラルフの練習に付き合っていた。エイルの厳しい指導のお陰で、ラルフは台詞に感情が籠められるようになり、尚且つ舌を噛まずにスラスラと台詞を読めるようになった。完全に台詞を覚えたわけではないが、ラルフにしてみれば成長した方だ。


