手を叩いた後、半分裏返った声音で歓声を上げる。そしてエイルの両手を掴むと、ブルブルと縦に振った。
「遅い」
「だって……」
「まあ、やる気が出ればいいよ。で、お前に頼みごとがあるんだけど、聞いてくれるかな。聞いてくれると嬉しい」
「な、何?」
「剣術の練習相手」
エイルの頼みごとに、ラルフは再度聞き返してしまう。聞き間違え出なければ、エイルは「剣術」と言っていた。そもそも、ラルフは剣術の経験はない。いや、剣自体持ったことがない。それだというのに、エイルはラルフを相手役に指名したということは――瞬時に野性的な勘で何かを悟った。
「嫌だ」
「どうして」
「絶対、苛められる」
「苛めないよ。それに、不真面目に剣術を行なったら相手を殺してしまう。あっ! 真剣は使わないよ」
「何で、剣術なんだ」
「役だよ。物語の中に、決闘のシーンがあるんだ。その為の練習だよ。勿論、此方も真剣じゃないよ」
しかし、ラルフはいまいち理解していない。どうやら最後まで台本を読んでいないのだろう、エイルの説明にラルフは間延びした声音を発し納得していく。だが、ラルフが剣術の練習に付き合う意思は示さない。それどころか、相手がエイルということで激しく拒否した。
「立って、剣を構えていればいいよ。ラルフに剣の腕前なんて、最初から期待していないから」
「無理」
「協力してほしいな」
「見返り」
「ない」
「じゃあ、嫌だよ」
「学園長……」
小声で呟かれた単語に、ラルフの顔から血の気が引いていく。彼は忘れているようだが、この話の発端は学園長だ。ラルフは両手で頭を抱えると、何度も「学園長」と呟き、回答を探していく。だが最初から回答は決まっていたらしく、ラルフはエイルに視線を向けると、一言「やります」と、言った。


