彼が演じているのは、ラルフと同じ貴族様。それも、妙にプライドが高い貴族様であった。
演劇の内容というのは、恋愛を主体とした王道作品。女子生徒から押し切られたというのが主な理由で、王子と侍女の恋愛という彼女達が好きそうな内容に仕上がっていた。最終的には二人は結ばれ結婚するのだが、このような結末にしてほしいと頼んだのも女子生徒達だ。
そしてプライドの高い貴族様は、ヒロインの侍女役にちょっかいを出したりからかったり、時に苛めている。そのような役割だった。所謂、世間的に言う「嫌われ役」というもだ。
意気揚々と演技をしている人物を他所に、エイルはラルフの特訓を行なっていた。その時、ラルフは本音を漏らす。
「面白い?」と――
「黙れ」
「だって、本当だよ。こういうパターンって、在り来たりだよ。結構、こういう話って、転がっているし」
「半殺しにされるぞ」
「誰に?」
「彼女達だ」
その言葉に、ラルフは反射的に口をつむぐ。彼も身を持って、彼女達の迫力を知っているから。しかし台本を書いた生徒も、彼女達の意見を全て取り入れたわけではない。そのひとつが、キスシーン排除だ。
勿論、女子生徒達の意見だけでは面白い作品に仕上がらないことはわかっており、それに恋愛が前面に出た話では男子生徒達から不満が噴出してしまうので、程好いバランスで台本は書かれていた。お陰で、男子生徒女子生徒から不満や文句が上がることは一切なかった。
「そうかのか?」
「台本、最後まで読まなかったのか?」
「だって、台詞覚えられないし」
「お前は……」
「怒らないで。でも、それを聞いたら頑張れるな。全部こういう話だったら、俺は嫌だった」
「同意見」
恋愛物がいいというのなら、恋愛小説を読んで妄想を膨らませていればいい。それに今回の演劇は学園中の生徒と教師、それに一般の人物も観るので、片方だけに偏った物語では全員が楽しむことができない。その時、ラルフは悟る。何故、周囲の生徒達がノリノリで頑張っているかを――


