だが、エイルを含め演劇の参加者は忘れていた。最大級のトラブルメーカーラルフの存在を。我儘を言っていた女子生徒への当てつけのような形で彼の役が決まったが、彼が演劇を悪い方向へ持っていく。
その結果、多くの者達が迷惑を被ってしまい、練習が思ったように進むことができなかった。
◇◆◇◆◇◆
四日後――
本格的な練習が開始された。台本を作成する生徒が思わぬ才能を示し、短期間で台本を書き上げてしまった。予想外の速度に誰もが驚くが、同時に早く練習を開始することができた。
今日の練習は、読み合わせ。最初はスムーズにいっていたが、途中で問題が発生してしまう。
「ラルフ」
「だ、だって……」
「感情を籠めろ」
「無理」
「お、お前」
その言葉は、エイルの前で禁句に近い。次の瞬間、彼の表情が変化していく。いや、それはエイルだけではない。役を貰った生徒全員が、同じ表情を作る。そして、一斉に深い溜息を付いた。
「棒読みだ」
「文字を読まないと」
「だからって、感情を籠めないと演劇にならないだろう。これだと、学園長に怒られてしまう」
エイルの説明に同調するようにラルフ以外の全員が頷くが、ラルフはのほほんっとし、悠長に構えている。普段のエイルであったら怒鳴り葉っぱを掛けていくが、今日はやる気が出ない。
エイルは近くに置かれていた椅子に腰掛けると、休憩を入れて欲しいと頼む。それに対し、文句を言う者はいなかった。誰もがラルフに対して疲れを感じ、結果一時間休憩が入れられた。
だがエイルは、休憩時間は存在しなかった。何故なら、彼の衣装が仮縫い段階までいったのだ。それを聞いたエイルは読み合わせが行なわれている部屋と隣接している部屋に向かうと、凄まじい量の舞台衣装を目にした。それはどれもこれも豪華絢爛という言葉が似合い、唖然となってしまう。


