しかしクラスメイトは正しい意味合いで受け取ってはくれず、もてなかった腹いせと勘違いしたのか口々に「虐めるな」と言い、腹を抱えて笑い出す。勿論、間髪いれずにエイルの怒鳴り声が響いた。
「怒るな」
「じゃあ、俺達は行く」
「ごゆっくり」
彼等は最後の最後まで、本当の意味に気付いてはくれなかった。その反応にエイルは毒付くもいつまでも引き摺っていられないので、肩を竦めるとローラに視線を向け口を開いた。
「あいつの何処が好き?」
「真面目ですから」
「そう?」
「勉強を教えてくれました」
「ああ、同じ専攻か」
ケインとエイルは友人関係にあるが、彼の全てを知っているわけではない。それに同性と異性に見せる態度が違い、ケインの新しい一面を知る。根っこの部分では、実に優しいと――
「あいつは危ない部分があるから、ローラさんのような方が彼女になってくれれば安心だね」
「そ、そうでしょうか」
「そう思うね。あいつはのほほんっとしているから、留年を何とも思っていない。だけど彼女が葉っぱを掛ければ、変わるかもしれない。友人として、結構心配しているんだよ。内緒だけど」
エイルはラルフの将来を心配していないが、ケインの将来は本気で心配をしていた。彼はラルフのように生来の天才というわけではないが、普通以上の能力を持っているので、それを世間で使わないと勿体無い。
彼が世間に出れば、絶対に成功するに違いない。メルダースの留年を気楽に考えている時点で、大物としかいえない。
彼のことを熱く語っていくエイルに、今度はローラが笑い出す。そして「頑張る」という意思を言葉に表した。
「学園長の思い付きからの演劇だからね。何が何でも、成功させないと後々が怖いことになるからね」
その言葉に、ローラは真剣な表情で頷く。彼女も、クリスティの凄まじさを身を持って知っていた。いや、彼女だけではない。メルダースの生徒全員が、クリスティの存在を恐れていた。二人は互いに利き手を差し出すと、硬く手を握り合う。そして、演劇成功を願った。


