そして、一番の問題はヒロイン役。しかし此方も、エイルのお眼鏡に適う人物を見付けることができた。
その者は、一言で言えば優等生。真面目が前面に出ていて、どちらかといえばがり勉に近い。性格は大人しく、暗いに近い。勿論外見は、長い黒髪に青い瞳とマナそっくりだった。
彼女は他の女子生徒とは違い、演劇に積極的な方ではない。どちらかといえば傍観者で今回もそのようにしようと考えていたところ、エイルに声を掛けられ動揺は隠せないでいた。
「どうしてですか?」
「似合うから」
「冗談を言わないで下さい」
エイルの言葉に、相手は声を荒げる。何か悪い部分を突いてしまったのか、相当機嫌が悪い。驚いたのは、エイルだけではない。周囲で二人のやり取りを見守っていたクラスメイトも、戦いていた。
「綺麗なドレス着られるよ」
「私は、似合わないです」
「美人だよ」
「だよな。あの煩い生徒より、綺麗だ」
「嘘よ」
数々の異性の言葉に、全て否定的な言葉で返していく。その時、一人の生徒が彼女の気持ちに気付く。何故、彼女が力いっぱい否定しているのか。その生徒は仲間を呼び集めると、小声で理由を話していく。
彼が悟った理由というのは、男女の問題。メルダースの中に好きな人物がいて、告白できないのだ。それは予想の中の意見だが、意外にも正解を言い当てていた。彼女は今、片想い中だった。
まさに、青春そのもの。エイル以外の男子生徒は一斉に笑い出すと、自分達が協力すると言う。同時に自分達の中に好きな相手がいるかどうか尋ねるが、残念ながらそれは違っていた。
「寂しい」
「残念」
「なら、誰だ」
「協力するんだし」
協力するのには、相手を知らないといけない。本当であったら恥ずかしくて話したくもないが、協力を煽るのには話しておかないといけないので、彼女は俯き小声で相手の名前を言う。その瞬間、エイルを含め全員が互いの顔を見合う。その相手は、全員が知っている相手だった。


