ロスト・クロニクル~前編~


 ヒロイン捜しはエイルが主体となって動くので、問題は衣装作りの方だ。クラスメイト達は目に付いた生徒片っ端から声を掛けていき、裁縫が得意か不得意か聞いていき誘っていく。

 同性の裁縫係りは、簡単に見付かった。しかし相手が異性となった場合、難しく相手は勘違いする。

 「エイルが、ヒロイン役を捜している」という部分が先頭に立ってしまい、其方を質問が集中してしまうのだ。そして裁縫係りと知った瞬間、多くの女子生徒が落胆するが、中に奇特な生徒もいた。

 大勢の観客の前で演じるのは苦手なので、何か仕事をするのなら裏方でコツコツとやっていきたい。その為ヒロイン役を演じるより、裁縫を行いたいと自主的に此方の仕事を選択する。

 心強い仲間の登場に、最初に衣装を作ると言った生徒が喜ぶ。そして何を思ったのか、相手の手を握った。

「こら」

「何だよ」

「どさくさに紛れて、何をしている」

「あっ! ばれたか」

「ばれるって」

「ほら、手を離す」

 友人の指摘に、その者は名残惜しそうに手を離す。一方突然手を握られた女子生徒は、呆然と立ち尽くしている。どうやら突然の出来事に、突っ込むタイミングを失ってしまっていたようだ。

「作る時、連絡する。で、何年の専攻は……あと、名前も教えてくれると助かる。これに書いて」

「わかりました」

 何と、用意がいいことか。一人の生徒が制服のポケットから、手帳とペンとインク壷を取り出す。それらを受け取った女子生徒は学年と専攻と名前を書き、寮で生活していると伝える。

「それなら、連絡し易い」

「宜しくお願いします」

「此方こそ宜しく。よし、もっと裁縫係りを捜していこう。複数の方が、早く衣装を作れる」

 その言葉に、エイルを含めクラスメイトが頷く。今回の演劇は何が何でも成功させないといけないので、ついつい必死になってしまう。誰もが同じ意見を持っているので冗談を言っても、真剣さは失わない。その後も運良く衣装作りの係が見付かり、最終的に十五人集まった。